掲載日:2010年01月21日 試乗インプレ・レビュー
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
日本では実感が湧きにくいかもしれないが、アプリリアはヨーロッパにおける最大級のモーターサイクルメーカーのひとつだ。ラインナップはスーパースポーツからスクーターまで多岐に渡り、レースにも積極的に参加。世界スーパーバイク選手権やMotoGPのGP250クラスなどで数々の栄光を手にしており、日本メーカーの好敵手となっている。今回試乗するシバー750GT ABSは、同社のネイキッドカテゴリを担うシバー750のツーリングバージョンだ。走りの楽しさに軸足を置いたベースモデルを、アプリリアがどのようなテイストでツーリングマシンに仕上げたのか、以前にシバー750をインプレッションした筆者としては非常に気になるところ。国内メーカーからも同カテゴリのモデルが数多く発売されているだけに、キャラクターの違いも興味深い。「GT」の二文字がどのようにスポーツネイキッドを進化させたのだろうか。
一般的に「ツアラー」という言葉から連想されるのは、高い直進安定性、ジェントルなエンジン特性、快適性の高さ、積載性の良さといったものだろう。ネイキッドモデルをベースをした場合なら、そういった特性を手に入れる代わりに、元来持っていたスポーツ性能を有る程度引き替えにしていることが多い。しかし、このシバー750GT ABSはそういった先入観を明確に否定する。見た目は確かにハーフカウルのツアラー然としたスタイルで、オプションパーツには大容量のサイドバッグやタンクバッグなどが豊富に設定されているが、走りの質はベースモデルであるシバー750そのままとも言えるほど、パフォーマンスに力点を置いている。直進安定性は確かに向上しているが、それ以上に印象的なのはコーナーリング性能の高さと、パルシブで力強いエンジンフィーリング。スロットルを開けた時の面白さはシバー750と比べても遜色が無い。エンジンモード切替でフルパワーを発揮するスポーツモードを選べば、軽いブリッピングでも針が跳ねるような鋭いレスポンスを味わえてしまうのは、ツアラーらしからぬキャラクター。通常走行で使うツーリングモードもなかなかホットな設定で、こちらもついスロットルを開けたくなってしまうパワーフィールだ。今回のテストでは晴天に恵まれたためレインモードの実力は把握できなかったが、使ってみた感覚ではスポーツモードと全く別のバイクに感じるほどマイルドになる。高速道路の移動はツーリングやレインでゆとりを持って走り、旅先のワインディングではスポーツモードで走りを満喫するといった使い分けができるのは、シバー750GT ABS最大の特徴だ。
ツーリング性能の向上については、ハーフカウルの装備がメインとなる。防風性については見た目通りのレベルにとどまるが、カウル内部の12V電源ソケットや小物入れといった利便性の高さはまさにツアラー。また、カウルはフレームマウントとなっているためハンドリングへの影響も最小限で、走りに対する集中力を妨げない。ただ、贅沢を言えばもう少しスクリーンに高さが欲しいところで、ベースモデルに比べると防風性は明らかに高いが、ツアラーと考えると少し物足りない印象がある。タンク容量は1リットル増しとなっているが、実燃費がリッター20km前後ということも考えるともっと増量して欲しいような気もする。燃料の重さで高いスポーツ性を損なう可能性を考えるとこれくらいの容量が丁度良いのかもしれないが…。とは言え、これほど走りに振ったツアラーの存在は貴重。ただ快適にツーリングするだけでなく、出先のワインディングで熱く走りたいというライダーにとって、面白い選択肢と言えるのではないだろうか。
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