掲載日:2010年02月02日 オフロードライテク講座 › オフ走行の基礎テクニック
Gとは重力加速度(gravity)の略称。ここでは「スピードレンジを問わずに感じられる荷重の変化」のことを指す。「このGをライダーが積極的にコントロールすることで、オフロードバイクの楽しさは広がっていく」とは三橋選手のお言葉。オフロードライディングをより楽しむためのテクニック、それがG RIDEなのだ。
フロントブレーキの使い方をマスターしたクラモチ。いきなりフロントタイヤをロックさせるような妖しい雰囲気がすっかりなくなっている。コーナーへのアプローチ・スピードも速くなってきて、ビギナー卒業も時間の問題というところまでやってきた。と、乗れている感が漂ってきているクラモチは、だからこそリアブレーキをうまく使えないことにイライラが募ってきているようだ。
クラモチ「三橋さん。リアブレーキを使うことに意味があるんですか? 確かに前後ブレーキを使えば止まり易くなるのは分かるんです。でも、リアブレーキが利いてるか利いてないか、自分でちゃんとコントロールできているかどうか、よく分からないんですよ!」
三橋「逆に聞くけど、リアブレーキを何のために使っているの?」
クラモチ「え、止まるためですけど、違うんですか…」
三橋「リアタイヤをロックさせても、させなくても、じつは制動距離は変わらないんだよね。つまり、リアブレーキは止まるために使うんじゃないんだ。じゃあ何に使うかというと、バイクの姿勢を安定させるためなんだ。バイクはリアタイヤを駆動させるから、リアタイヤにはつねに前進しようとする力がかかっている。その前進する力を抑えることで、リアタイヤが路面をグリップするんだ。リアタイヤが路面をグリップするということは、リアにGがかかっているということで、それは“リアサスが縮む=リアまわりが下がって姿勢が安定する”ということなんだ。だからリアブレーキは止まるためでなく、姿勢を安定させるために使うと覚えておこう。止まるために使うのは以前練習したフロントブレーキなんだよ」
クラモチ「姿勢を安定させるため、というのは理解できました。でも、利いてるか利いてないかが分かりません!!」
三橋「リアブレーキの微妙なコントロールはすごく難しい。だからまず、確実にロックさせて、ロックしている状態を体に覚え込ませよう。それでロック状態を感知できるようになり、ロックしないようなブレーキペダル操作を練習していくんだ」
リアブレーキはフロントブレーキのような繊細な操作がやりにくい。だから、走行スピードを速くした勢いでロックさせるのではなく、ゆっくりとブレーキペダルを踏んでいき、ロックしたらゆっくりとブレーキペダルをリリースしていく。走行スピードが速いからと言って、ブレーキペダル操作は速くしない。止まることを意識するのではなく、ブレーキペダルをゆっくり踏み込んでいった時のマシン挙動の変化を意識する。この挙動の変化が、リアブレーキの利き具合を表してくれる。
今回はリアタイヤを意図的にロックさせることでその状態を知り、リアブレーキのロックを回避するのが目的。不意にロックするのは操作ミスだが、じつは方向転換にも使える。それがブレーキターンだ。コーナー手前の直線部分でアプローチ・スピードをしっかり減速し、マシンを傾けると同時にリアをロックさせる。すると一気にマシンの向きを変えることができる。タイトなコーナーで使えるテクニックだ。その方法はまたいずれ…。
リアブレーキをロックさせるには、ブレーキペダルを踏み込んでいけばいい。しかし、走行スピードや路面状態によってタイヤのグリップも変わってくるので、どれだけ踏めばロックすると一概には言えない。それに足でペダルを踏んでいくので、フロントブレーキほど繊細な操作もできない。だからペダルを踏む量に注意するのではなく、まずはリアの挙動が変化することに意識を集中させよう。
ペダルを踏んでいきリアタイヤがロックすると、リアの振られ方が大きくなり、マシンコントロールがしにくいと感じるはずだ。止まることが目的ではなく、リアブレーキでロック状態を作り、その時のマシン挙動をつかむことが目的なので、フロントブレーキは使わない。そして、スピードも最初はゆっくりでいいので、リアの振られ方が変わることを体感できるまで、何度も練習することがポイントだ。
リアタイヤをロックさせ、ロックしている状態を体感できるようになったら、ロックしたリアブレーキをリリースしてみよう。すると、リアタイヤが路面をグリップしていき、リアの振られが収まっていくはずだ。最初から完璧な操作は無理なので、まずはスイッチをオン⇒オフするように、リアブレーキをロック⇒リリースという具合に操作して、マシンの挙動の変化を体に覚え込ませよう。そうしながら、徐々にロックを解除するペダル操作の精度を高めていこう。
リアタイヤをロックさせてもすぐにリリースできるようになっておけば、リアブレーキでマシンの挙動を安定させることができ、フロントブレーキとリンクさせることで制動距離を短くすることもできるようになる。制動距離が短くなれば、より速いスピードで走っても止まれるようになる。つまりスピードアップできるというわけだ。
同じスピードでアプローチして、リアブレーキだけを使ってブレーキングした場合、リアをロックさせた場合でもロックさせなかった場合でも、じつはリアブレーキのみに関して言えば制動力も制動距離も変わらない。では何が違うのかと言うと、それはバイクの姿勢の安定度。ロックさせた場合、路面にGをかけることができなくなるので、リアタイヤは路面をグリップできない。するとリアタイヤは路面の凹凸に合わせて動けず、スイングアームに重りがついているような状態になってしまう。こうなるとリアサスも路面からの衝撃を吸収できなくなり、リアが振られる原因になってしまう。
ブレーキペダルをゆっくりと踏み込んでリアタイヤがロックしたら、リアが振られるようになる。それはリアにGがかかっていない状態だ。だから、リアブレーキをゆっくりとリリースし、リアタイヤのグリップを回復させてやろう。最初はスイッチのようにオン/オフで構わないが、徐々にリリースする量をコントロールできるようになろう。リアタイヤをロックさせる時、腰を引いてやるとリアにGをかけられ、マシン挙動を安定させられる。この姿勢は頭の位置も自然と下がるので、重心も低くすることができる。そしてヒザの角度も急にならないので、足首も曲がりすぎず、ブレーキ・ペダル操作がし易くなるというメリットもあるのだ。
体が遅れないことを意識しすぎて、前に乗りすぎてしまうことがある。これだとリアにGをかけらないし、ヒザが曲がりすぎて足首も窮屈になり、スムーズなペダル操作ができなくなる。
リアブレーキの利き具合を体感できなかったクラモチ。ブレーキングした際に体が遅れるのを防ぐため、シート前方に座っていた。この位置ではリアが振られてもリア荷重できず、ヒザが曲がりすぎているのでブレーキもガツンと踏んでパッとリリースすることしかできない。その結果、ブレーキペダルを踏むと即ロック。マシンはあらぬ方向へと向いてしまっていた。
リアブレーキをゆっくり踏んでいくことで、リアの挙動の変化を感じ取った。腰を後に引くことでリアにGをかけられ、頭の位置も低くなっているので、マシンの挙動が安定している。ヒザも曲がりすぎていないので、ブレーキペダルをコントロールできる幅が広くなっている。リアブレーキでマシンの姿勢を安定させられているので、リアブレーキの使い方もマスター。憎いぜ、テクニシャン!
2007パリダカ・市販車無改造クラスで優勝を果たしたのは記憶に新しいところ。四輪ドライバー転向前は、BAJA1000、UAEラリー、ラリーレイドモンゴル、パリダカなどの海外レースで輝かしいリザルトを残してきた。豪快かつ繊細なライディングは未だに健在。
GARRRR編集スタッフではあるものの、オフロード経験はほぼゼロ。学生時代にカッコイイという理由で購入したKDX200SRも半日で焼きつかせてしまい、その後もストリート・オフローダーとしてRMX250S、DT200WRと乗り継いできた2スト好き。
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