掲載日:2010年03月29日 特集記事 › Wスタンダード
記事提供/2009年8月1日発行 絶版バイクス4
市街モデルに4気筒エンジンが搭載されるなどということは考えられなかった1960年代、W1の2気筒エンジンはハイパフォーマンスを求めるための必須アイテムだった。翻って21世紀目前に登場したW650は、4気筒エンジンが当たり前となった中で、あえてこの形式を選択した。同じWの名が冠された2台だが、そこには大きな違いがあった。
キャブトンマフラーから破裂音にも近い歯切れの良い排気音を響かせながら、車体全体を振動の塊として走りゆくオートバイ。現代のバイクではあり得ない振動と音は、ノスタルジーを感じさせながらも、「これがバイクという乗り物なんだ」と主張する。W1が登場した1960年代には、それが目標としたイギリス車を筆頭にしたハイパフォーマンスバイクの典型的スタイルだった。
目黒製作所が開発した500ccのメグロK1をベースとして、その後カワサキとの業務提携、合併吸収を経てカワサキW1が登場したのは1966年。この時点ではCB750フォアもZ1もなく、Wにはアメリカを中心とした世界戦略車としての重責が担わされた。
初期のW1からW1Sまでは当時のイギリス車と同じ右チェンジ左ブレーキ、1970年代に入ってからのW1SAでは現代のバイクと同じ左チェンジ右ブレーキとなり、最終型のW3では前輪にダブルディスクブレーキを装備。CBやZというスムーズな4気筒モデルが登場してからもビッグツインのテイストを好むユーザー向けに発売されてきた。
WシリーズにはCBやZに負けず劣らずマニアックなオーナーが多く、オーナーズクラブの活動や、リプロダクションパーツ製作も活発。年齢層が低いオーナーも増えつつあるためか、W3への注目度が高まりつつあるのも最近の傾向だ。
初代Wシリーズの生産終了から四半世紀を経て、1999年に登場したのがW650だ。650cc(実際には675cc)の空冷バーチカルツインやキャブトンマフラー、丸みを帯びたタンクデザインを持ちながら、ベベルギアを用いたOHCのバルブ駆動方式や現代の騒音基準に合致した排気音など、モチーフは先代にあるのは間違いないものの、デザイン重視、雰囲気重視となったことは否めない。レーサーレプリカ全盛期にゼファー400で一大ブームを作ったカワサキとしては、スーパースポーツ、メガスポーツ主体の20世紀最後のビッグバイクカテゴリーに、落ち着きのあるマイルドな1台を投入したかったのかも知れない。
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だが、そのW650も2008年のファイナルモデルをもって生産を終了。今後は絶版車としてユーザーに愛されていくことになるだろう。とはいえ、初代に比べればホヤホヤの絶版車であるW650には、モディファイによって個性を高めるという楽しみ方がある。以下のページでは4台のW650カスタムを紹介するが、いずれもWの魅力を高めた仕上がりで、すでに所有しているオーナーにはもちろん、これからWに乗ってみたいという人にとっても参考になるはずだ。
W1
1966年に登場したW1は、500ccのメグロスタミナK2用を624ccに拡大したエンジンを搭載した、カワサキ初の世界戦略車。ライトケース一体式のコンビネーションメーターやシングルキャブレター、キャブトンタイプではないモナカマフラーなどが特徴だ。
W1SA
1970年に登場したW1SAは、それまでの重厚なメッキタンクをスポーティな塗り分けのペイント仕上げとして、シフトチェンジを左足に改めるなど、W1Sとはガラリと仕様を変更している。これにより現行車からの乗り換えてもシフト操作の違和感は解消された。
W2TT
W1ベースの輸出仕様W1SS、その改良版であるW2SSにアップマフラーを装着したスクランブラー仕様がW2TT。1968~1969年の2年間のみ販売された稀少モデル。オンロードを主体として不整地も走れるというレベルだが、個性的なデザインは魅力的だ。
2002年モデル
W650が登場したのは1999年。ボア72×ストローク83mmのエンジンは最後まで不変だが、2001年には環境性能を高めるKLEENを追加、2004年には最高出力を変更するなど、細かな仕様変更を行っている。ハンドルはアップとロータイプから選択できた。
2007年限定車
燃料タンク、前後フェンダー、サイドカバー、ヘッドライトボディに至るまで、印象的なキャンディバーントオレンジを施した、2007年の特別色モデル。シリーズ中でもかなり派手な印象のカラーリングである。ホイールリムやスプロケットカバーはブラック仕上げ。
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