ホンダ VT750S
スズキ イントルーダークラシック400

ホンダ VT750S – スポーツスターを標的にしたニューモデル

掲載日:2010年04月15日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

スポーツスターを標的にしたニューモデル
VT750Sにはホンダのどんな思惑が?

2010年、ホンダが発表したニューモデルのラインナップを見てみると、VT1300CXにシャドウ750、シャドウファントム750と、“大型アメリカン”というカテゴリへの強化が見て取れる。また他メーカーが1000ccを超える大排気量モデルに注力する中、排気量750cc、いわゆる“ナナハン”モデルの充実を図っている点も見逃せない。そんな“アメリカン”と“ナナハン”という2つのワードを結びつけるラストピースとして登場したのが、今回紹介するVT750Sだ。シャドウ・シリーズとは一線を画したスタイリッシュなフォルムは、メーカーも明言するとおりハーレーのスポーツスターをターゲットとしている。しかしホンダが世に送り出したモデルである、ただスポーツスターを模しただけであるわけがない。今回はあえてVirgin-Harley担当者にしてスポーツスター所有者である僕が、このVT750Sのインプレッションを行ってみた。

ホンダ VT750Sの試乗インプレッション

ホンダ VT750Sの画像

日本の道路事情を熟知した
国産メーカーだから作れたモデル

ヘッドライト上部に設置されたスピードメーターにデュアルテーパードマフラー、水冷Vツインエンジンの右側に設置されたエアクリーナー、滑らかなラインを形成するシートに流麗なリアフェンダーなど、全体のフォルムだけならスポーツスターそのもの。違いを言えば、フレーム前部に設置された水冷エンジン特有のラジエターぐらいか。その感覚で跨ってみると、シートポジションは思っていたより高く感じる。アメリカンと言うとどうしても足の裏全面が地面に着くイメージがあるが、ほんの少し踵が浮く。エンジンを始動させると、水冷Vツインエンジンの歯切れのいいサウンドがマフラーから吐き出され、静かながら心地よいトルクをライダーに伝える。“スポーツスターとの比較”という点で言えばかなりおとなしい印象だが、このVT750Sはホンダ独自の解釈から生まれたモデルなのだから、同じであるわけがない。そんなことを考えながら都内を走り抜け、高速道路へと入っていく。柔らかいシートはライダーの体をしっかりと受け止めて、前後タイヤへしっかりと荷重が乗り、バランスのいい安定感を生み出す。跨った当初の足つき性など忘れてしまう高速域での走行性能は、ハーレーの重量感とはまた違う安心をもたらしてくれる。スポーティなアメリカンというよりは、重心が若干低くなったネイキッドモデルといった印象を受けた。

ホンダ VT750Sの画像

実はこのVT750S、前後タイヤのサイズがスポーツスターとまったく同じで、車重は同モデルと比べると約30キロ軽い。全長こそ10センチほど長いのだが、実質的に“ひと回り小さくなったスポーツスター”と言えるだろう。これは決して批判的な意味合いで言っているわけではない。ストップ&ゴーが多いシティユースでの走行を試したときに、排気量745ccという水冷4ストロークVツインエンジンとの組み合わせが絶妙であることを体感させてもらった。スポーツスターはハーレーのラインナップ中でも日本人向きと言われるモデルだが、アメリカと日本の道路事情の違いもあり、883ccモデルでもパワーを持て余すシチュエーションが少なくない。このVT750Sはそうしたスポーツスターに似た構造に、シャドウ・シリーズと同じ排気量750ccの水冷Vツインエンジンを搭載したことで、大型モデルでありながら鈍重ではないスポーティな走りを生み出している。例えば緩やかなカーブや信号での右左折時で感じたのだが、フロントが重すぎず切れ込みもスムーズで、低速ギアでスロットルを回しても水冷エンジンのレスポンスもよく、アメリカンとは思えないスマートなコーナリングを体感させてくれる。日頃からハーレーに乗る機会が多い僕なだけに、新鮮な楽しみを味わえた。ある意味“美味しいトコ取り”とも言える一台ではないだろうか。日本の道路環境をよく知る国産メーカーだからこそ生み出せるバランス感覚を備えたモデル、それがVT750Sと言えるだろう。

ホンダ VT750Sの特徴は次ページにて

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