掲載日:2010年04月16日 特集記事
記事提供/2009年11月24日発行 絶版バイクス5
日本製4気筒エンジンを搭載したスペシャルバイクは数多く存在するが、イタリアのビモータ社は、数あるコンプリートバイクの頂点に君臨する素晴らしき造り込みとテクノロジーを持っていた。♪
取材協力/シオハウス Phone 03-3854-3200
会社が設立された当初は、空調設備機器のコンストラクターとしてスタートしたイタリアのビモータ社。同社設計部門の責任者であり、バイクエンスージャストだったマッシモ・タンブリーニは、1965年モデルとして極少数生産されたイタリアのMVアグスタ社製4気筒ロードモデル「MV600」のエンジンを搭載したカフェレーサーを製作。このマシンが後にビモータ社の社運を賭けるバイク事業転向への礎となっている。
その後、ビモータ社では、本業の空調設備事業を推進する傍らで、取り引き先のチューブメーカーや溶接ベンダー、そして鋳物メーカーにバイク用スペシャルパーツ製作を依頼。ホンダのOHC4気筒エンジンを心臓に持つ 「プロトタイプモデル」を製作した。
その独創的なデザインとマシン作りが注目され、ビモータ社はバイクメーカーとして進路変更。そして、CB750のOHCエンジンを搭載するための「HB1キット」を僅かな数だが発売した(20台近くのローリングシャシーキットが製作されたといわれる)。当時のイタリア国内で750ccの新車を3台以上買えたのがキット価格!! コスト度外視の価格設定には誰もが驚き、「珠玉」を購入できたのは、一部の富豪だけだった。
ここに紹介する「ビモータHB1」は、まさしくその当時のフルキットが組み込まれた世界的に希少な1台である。本誌3号巻頭特集の「400cc企画」では、ビモータCB400Fをリポートしたが、マシンオーナーは同一人物。熱狂的なビモータファンであることは、読者ならご察しいただけると思う。
この撮影までは、海外の雑誌でしか見たことが無かったHB1。眼の前で見るそのインパクトは、強烈そのものだ!! 後のビモータ製シャシーの象徴的テクノロジーのひとつ「ドライブシャフトセンターの延長上にあるスイングアームピボット機構」は採用されていないが、そのテクノロジーを予感させるに十分な造形美を持つのが、HB1のフレームレイアウトである。
「ダブルクレードル」ではなく、敢えて「ダイヤモンドフレーム」を採用しているのは、大きく且つ決して軽くは無いホンダフォアを抱きつつも、可能な限り「車高を下げる」ための策ではないかと思われる。バックボーンを含め、要所はストレートパイプで構成されている。しかも薄肉太径パイプを取り回すことで、フレーム剛性を確保しているようだ。角断面スイングアームと太いスイングアームピボットシャフトを採用し、この時代にすでに締結剛性を追求。前後キャスティングホイールはタンブリーニデザインのビモータ製で、その製造は、あのカンパ二ォーロ社が担当した。まさにイタリアンバイク・テクノロジーの集結である。
注目のホンダフォアは、76年型CB750F-Ⅱ/ヨーロッパ仕様車に搭載されたもので、エンジン打刻「B750GE」がその特徴だ。以上のことから、このモデルには76年当時、新車から降ろされたエンジンが搭載されているのではないかと思われる。冷却フィン付きドライサンプ用オイルタンクをエンジンの前方に配したレイアウトも特筆ものだ。マスの集中化を目指しつつ、効果的にエンジン油温を下げることができるが、渋滞は考慮されていない様子。まさに 「ロードゴーイングレーサー」そのものなのだ。
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