ホンダ VT1300CR
スズキ イントルーダークラシック400

ホンダ VT1300CR – 圧倒的な存在感を見せつける

掲載日:2010年06月10日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

圧倒的な存在感を見せつける
重厚感あふれるカスタムクルーザー

ホンダが2010年11月に発売した「VT1300CX」は、まさに衝撃的なモデルだった。大胆なハイネックフレームに、メッキに包まれた大排気量エンジンを搭載したファクトリーメイドのチョッパー。これまでのホンダ製バイクからは想像もつかないスタイルが大きな話題となったのは、未だ記憶に新しい。今回試乗する「VT1300CR」は、VT1300CXと同じエンジンを搭載するクルーザー。同時に発売された「VT1300CS」と合わせて、VT1300シリーズのバリエーションモデルとしてラインナップされている。しかし、新たに登場したこのVツインクルーザーは、単なる“派生車種”ではない。VT1300CRはエンジンこそ同じだが、外装はもちろんフレーム自体も全く異なっている。ロー&ロングに徹底的にこだわったスタイリングと、濃厚な味わいを持つ水冷OHC3バルブV型2気筒エンジンがどのように融合したのか。シリーズの大元となったVT1300CXとの比較を交えつつ、このモデルに宿る魅力を試乗インプレッションを通して検証する。

ホンダ VT1300CRの試乗インプレッション

ホンダ VT1300CRの画像

華やかな見た目に隠された
極上のクルージング・プレジャー

「視界が違う」。これこそVT1300CRの魅力を端的に、そして的確に表現している言葉だ。前方に低く長く伸びたグースネックフレームが支える車体に体を預けると、視界に入るのはケースに風景を映し出すヘッドライトとハンドルバーだけ。「視界を遮るものが何もない」と言う、跨った瞬間に感じるこの開放感は、エンジンに火を入れて走り出せばより強く実感する。タンクオンのメーターだけでなく、ワイドハンドルに添えた手も、意識しなければ視界に入ってこない。目に映るのは流れていく風景だけで、あとは両足の間で鼓動するエンジンしか感じられない。単純にクルージングを楽しむと言うならば、他のモデルでも楽しめるし、兄弟車とも言えるVT1300CXでも十分に味わえる。しかし、VT1300CRでは視界の演出によって、快適なクルージングに没入する快感が付け加えられるのだ。もしかすると、人によっては「ただ視界が広いだけではないか」と言うかもしれないが、その“たかが視界”がライディングの気持ち良さに、ここまで大きな影響を与えるとは思いもよらなかった。

ホンダ VT1300CRの画像

そして、この開放感あふれるクルージングを支えるのが、シリーズのアイデンティティの一つとも言える、水冷OHC3バルブV型2気筒エンジン。最大トルクを2,750回転で発生する1,312ccのパワーユニットは、右手に合わせてスムーズに吹け上がるが、それ以上に濃厚な鼓動感が面白い。意識的に高めのギアに合わせて走れば、太いトルクと共に柔らかなバイブレーションが体を揺さぶり、非常に心地良くなってくる。ただ見晴らしが良いだけでは、そこまで印象的なクルージングは楽しめないだろう。ホンダ製エンジンらしい滑らかさと、VT1300シリーズ以前には無かった官能的なエンジンフィールがあればこそ、前述した快感が成り立つのだ。今回の試乗で高速道路のクルージングをメインに楽しんだのだが、走っていると「止まりたい」という気分が消えてしまうほど、VT1300CRは気持ち良い。この感覚は「癒しのバイク」と言ってしまいたいくらいだ。また、ハンドリングについても少し言及しておきたい。VT1300CX同様ヨーク角が与えられたサスペンションが作るハンドリングは、クルーザーらしからぬナチュラルなもの。ただ、幅が非常にワイドなため、ハンドルを一杯まで切った際に腕の余裕が無くなってしまうことがあった。とは言え、そういったシチュエーション以外は特に不安を感じることは無い。それよりも太目のタイヤとの組み合わせが作るおおらかな操作感が印象的で、このバイクにマッチしていると感じた。

しかし、そんなVT1300CRにも弱点は存在する。大柄な車体と幅広なハンドルは、混雑する場所だとやはり自由度が少なく、大排気量エンジンだけに燃費もリッターあたり16km前後と決して良くはない。オプションにはツーリング向け装備が多数ラインナップされているが、バイク単体では積載など実用性に欠ける部分も存在する。けれども、一度走り出せばそういったことを綺麗に忘れてしまうほど、VT1300CRの走りには特別な喜びがある。個性的なルックスの下には、極上のクルージングマシンとしての魅力が潜んでいるのだ。

ホンダ VT1300CRの特徴は次ページにて

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