掲載日:2010年07月15日 試乗インプレ・レビュー
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
今、最も話題となっている国内向けスポーツバイクと言えば、2010年8月1日にカワサキから発売される「ニンジャ400R」だ。2006年に同社のZZR400が生産を終えて以来、ずっと空席だった400ccクラスのフルカウルモデルが復活するということで、多くのライダーがデビューの日を心待ちにしている。ニンジャ400Rは、輸出車であるER-6fをベースに、日本の普通自動二輪MT免許に適合する400ccエンジンを搭載した車両だ。同社のERシリーズは、扱いやすさやバランスの良さによって、海外で高い評価を得ている。ベースマシンの素性が確かなだけに、国内向け仕様についても期待値が高くなってしまう。また、ニンジャ250Rよりスポーツツアラー的な性格に仕上げられていると言う点も気になるところだ。試乗インプレッションを通して、早速話題のニューモデルが持つ実力を確かめてみたい。
ニンジャ400Rは、スペックシートだけが性能を表す訳ではないことを、改めて確認させてくれるモデルだ。確かに諸元表を見ていると、突出した数値や特別な装備は見当たらない。しかし、いざ乗ってみるとそこには現れない実力を持っていることが実感できる。日本専用に再設計された水冷DOHC並列2気筒エンジンは、その見えない実力の象徴だ。最大出力は32 kW(44 PS)/9,500rpmと、決してハイパワーなエンジンではないし、往年のライダーなら400ccにしては物足りなさを感じるかもしれない。実際、パワーもマイルドで、レスポンスも穏やかだ。しかし、こういった味付けは過激な走りには向かないが、市街地走行やツーリングと素晴らしい相性を見せる。特に時速60km前後の味付けが絶妙で、スポーツバイクにありがちな“スロットルを開けられないストレス”とも無縁。クルマの流れに追従していても、ギクシャクした素振りをまったく見せない。ニンジャ400Rのエンジンが、日本の道路事情に合わせて丁寧に仕上げられていることを感じさせてくれる。
また、ER-6fに準拠する車体がエンジンに勝っているというのも、ニンジャ400Rの乗りやすさに繋がっている部分。少々ラフなスロットルワークを行っても、車体側に余裕があるため挙動が乱れにくく、安心感が強い。同様にブレーキも車体同様650ccクラスに合わせたものが装備されている。タッチは柔らかいが、確かな制動力とコントロール性を備えており、ビギナーでも扱いやすいブレーキとなっているのが特徴。乗り手が安心して操作できることを大切にし、安易にパフォーマンス重視に走っていないのは好印象だ。また、400ccクラスでは唯一となるフルカウルの完成度も高い。ウインドプロテクション性能はさすがの一言。これを体験してしまうとネイキッド+ハーフカウルの防風性能がいかにも頼りなく感じてしまう。上端がワイドになったスクリーンも効果的で、体に当たる走行風を大幅に低減してくれる。400cc以下の排気量では、最もハイウェイクルージングに向いたバイクと言えるだろう。
ニンジャ400Rは目立つスペックを持つモデルではないが、多くのライダーが楽しめる日本仕様のスポーツツアラーとして、安心感のある仕上がりとなっている。既存のライダー層だけでなく、これからバイクを楽しもうというビギナーにとって、この「気負わずに乗れる」と言う性能は大切だろう。そういう部分を重視する傾向はニンジャ250Rにも感じられたが、新たに加わったニンジャ400Rでより明確になった印象だ。もしかすると、ニンジャシリーズはスペック至上主義が多かった日本のスポーツバイクの在り方を問う存在なのかもしれない。数値だけに捉われない新たなスポーツバイクとして、ニンジャ400Rは是非一度体験して欲しいモデルだ。
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