掲載日:2010年10月06日 特集記事
2010年9月6日発行 月刊ガルル No.294より記事提供
テストライド/小林直樹 写真/長谷川徹 まとめ/小川浩康
パラレルツインとボクサーツイン。エンジンレイアウトは違うものの、排気量はともに1200cc。
そしてドライブシャフトで後輪を駆動するスーパーテネレとGS。この2台のマシンを三橋淳が乗り換えつつ、ダートをめざして高速移動。オフロード・エクスプレスたちの走りを堪能してきた!
夜明け前に都心を出発し、スーパーテネレとGSを乗り換えつつ約3時間ほどハイウェイクルージングし、とある砂浜にたどり着いた。目的地まで一気に走り、そこから楽しそうな道を探してさらに足を伸ばしていくというビッグオフならではのツーリングを楽しみたい。そんなライター小川の提案に、二つ返事で応えてくれたのが三橋淳だ。
目的地まで一気に移動し、いつもの旅よりも
行動範囲を広げてくれるオフロード特急
小川「高速巡航が快適ですね」 三橋「スクリーンは利いているし、速さは十分だし、2台とも楽ですね。でも、スーパーテネレはヨーロッパの高速道路の流れにピッタリ合う設定になっていて、エンジンが落ち着いて回り続ける回転数に合わせると巡航速度が上がりがちです。GSはそのスピードで走らせると振動が出てきます。オフ寄りタイヤのせいもあるけれど、追い越し車線の流れに乗るくらいがちょうど良く感じましたね。とはいえ、パワーがあってポジションも楽だから、この2台ほど高速道路が快適なバイクは少ないんじゃないかな」 小川「同感ですね。ただスーパーテネレのポジションは、自分には少し遠く感じました」 三橋「やや前傾姿勢で、ロードバイクに近い感じだからでしょうね。GSはハンドルが少し遠くてやや不自然ですが、上体が起きたオフ車のポジションになっているんです」 2台を乗り換えてポジションの違いを確かめつつ、しばしサンドランに興じてみた。 小川「硬く締まって走りやすいというのもありますけど、2台とも意外と走れるものですね。走る前はビビってたんですけど、バイクが動いていれば重さは感じないし、足着き性も気にならない。ただ、ロード寄りタイヤもあって、スーパーテネレは発進が難しかったです。Uターンする時の車体がスッと入っていくスピードも速く感じました」 |
| どの回転域からでも、アクセルを開ければトルクが立ち上がってくるので高速巡航は楽。しかし4000回転以上では振動を感じる。とはいえ速さは十分 フラットトルクとセルフステアのバランスが、ダートでの乗りやすさと走破性の高さを実現。GSにとってのダートは積極的に走っていける場所だ |
三橋「スーパーテネレは4000回転からのトルクがすごくよくて、そこをキープできるとキビキビ走れます。ただ3000回転以下が排気量の割りには細い。だから発進やUターンといった極低速域では気をつかうんです。GSは反対に低回転から高回転までフラット。力強いトルクが万遍なく出ているから、低回転でも走っていけるんです。それに、車体を寝かすとハンドルが切れ込んでいくセルフステアの利きが自然で、それが重さを感じさせないんです」
小川「林道も走れそうですね?」
三橋「フラットなら問題ないですよ。でも、荒れた林道は上下に振られるから、2台とも重さがのし掛かってきます。そこをバランスを崩さないで走るには、ライダーがシビアに荷重抜重してサスをコントロールする必要があります。そんな林道を走りに行ってみますか(笑)」と、林道を探しに海から山へ。山へ行けば自ずと峠を走ることになる。
怒濤のトルクをライダーがコントロールすれば、ダートも走破できる。ダートでは乗り手を選ぶが、そんなビッグオフらしい乗り味はスーパーテネレが一枚上手だ
小川「スーパーテネレの車体の動きが、峠では切り返しやすさに感じました。エンジンレスポンスもクイックで、車体の大きさを感じずヒラヒラ行けますね。GSもセルフステアで、倒し込むだけで曲がってくれます。でもタイヤに不安があって、遅くはないけど、スーパーテネレほどの気持ちよさはなかったです」 三橋「GSはセルフステアが利いていて、トルクはどの回転域からでも出てくる。だからアクセルを閉じればインに切れ込み、開ければリヤを振り出せる。アクセルだけでマシンコントロールできるからリズムを作りやすいんです。スーパーテネレは重心位置が高く、マシンを倒し込みやすい。そして3000回転以上をキープしていれば怒濤のトルクとレスポンスでキビキビ走っていける。下手なロードスポーツより乗りやすいし、全然速いですよ」 小川「得意分野が違うんですね」 三橋「コンセプトの違いですよ。大陸巡航車としてダートもしっかり走るならGS。ダートを通過することで行動範囲を広げてみたいならスーパーテネレ、という感じですね」 小川「オンオフとしてはGSがまとまっているってことですか?」 三橋「GSは30年間、どんな路面でも乗りやすい素直な乗り味を続けてきました。でもそれは、どこを走っても楽しさは同じとも受け取れるんです。スーパーテネレはダートを通過する性能を持ちつつ、舗装路でスポーツライディングできる乗り味になっています。実際、9割方舗装路を走るのだから、現実路線とも言えますよね。それに、普段でも言うほどダートを走ってます?」 小川「確かにそうですね……。では、この2台でどこへ行きます?」 三橋「GSは北海道。北海道は基本的にフラットで、林道の割合が多くなりますから。スーパーテネレは本州。本州は切り立った山が多く、どこへ向かうにも必ず峠を越えます。アルプスあたりの峠は最高に楽しいと思いますよ」 |
| クイックなレスポンスとマシン挙動が、ロードバイク以上にシャープな走りを実現。「お前に乗りこなせるのか?」と言われているかのようだ 峠でも扱いやすい素直な乗り味はリズムを作りやすい。オン寄りタイヤならもっとスムーズに走れるが、そうするとダートが楽しめなくなる 高速巡航性の高さはオンロードモデルにも引けを取らず、どこまでも走り続けたくなる。オフ寄りタイヤを着ければダート性能は上がるが、高速巡航性とトレードオフになってしまう |
日は西に傾いているけれど、2台の走りをもう少し楽しむために、次の山に向かって走りだした。帰路の高速移動なんて気にならないから。
ENGINE 回転型とトルク型 「スーパーテネレはミドルからトルクが立ち上がり、その回転域をキープすると走りが楽しめるスポーツ性の高い特性。好きな人にはたまらない乗り味になっている。モデルチェンジ毎に排気量を上げているGSは、回転上昇の感じは変わっているけれど、フラットトルクとパルス感は変わらず、一貫して乗りやすさを演出している」と三橋氏は分析した。 |
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DRIVE SHAFT トルクとパワーを受け 「2台とも車重があるから、チェーンよりも重いという感じはないですね。トルクとパワーが大きくて、1回のツーリングで1000km以上走ることも多いヨーロッパでは、チェーンだと伸びてしまうんです。そうしたメンテナンス性も考慮してドライブシャフトを採用していると思います。合理的ですね」 |
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FRONT SUSPENSION テレスコピックとテレレバー 「2台とも硬いセッティングです。でもスーパーテネレは作動性がよく、耐ギャップ性はかなりいい。キャスターも立ち気味でクイックな乗り味です。GSはブレーキングでノーズダイブしない独特の乗り味が、無駄な挙動を抑えてくれます。でも沈め込むのは大変で、ダートでは反発が強すぎることがあります」 |
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FRONT BRAKE 制動力に不満なし 「2台ともフロントをかけるとリヤが連動するシステムで、重い車体をしっかりと受け止めてくれます。ABSもよくできているし、安心感があります。ただ、GSはABSをキャンセルできるから、ダートでのコントロールの幅をより広げることができます。でも、これができるのは上級者ですね」とアドバイスしてくれた |
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METER DISPLAY 見やすいメーター類と スーパーテネレはトラクションコントロールのキャンセルと利き方を2段階に、エンジンレスポンスを2つのモードに調整可能。GSはABSとASC(トラクションコントロール)のキャンセル、ESA(サス設定)を2段階のプリロード×3つのダンピングの計6モードに設定可能。操作方法も視覚的に分かりやすくなっている |
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SEAT 別体式を採用した スーパーテネレとGSのシートは、タンデムシートと別体式となっている。そのおかげで、ライダーズシートの高さ調整が可能になっている。スーパーテネレは845mmと870mm、GSは850mmと870mmのそれぞれ2段階に設定できる。シート前方は絞ったスリムな形状だが、厚みがありお尻は痛くなりにくい。 |
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足着き性 重心バランスとシート シート前方が絞られていることと、直立時に車重を感じない重心バランスのおかげで足着き性は悪くない。テスターは173cm、70kgだが、不安を感じなかった。しかし三橋氏は「この2台を存分に楽しむなら、シートを高い位置にセットしてください。足着き性は悪くなりますが、ヒザの曲がりが少なくなって長距離移動が断然楽になります」と言う。 |
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YAMAHA Super Tenere | BMW R1200GS | |
全長 | 2255mm | 2210mm |
全幅 | 980mm | 940mm |
全高 | 1410mm | 1450mm |
ホイールベース | 1540mm | 1520mm |
最低地上高 | NA | NA |
シート高 | 845/870mm | 850/870mm |
総排気量 | 1199cc | 1199cc |
エンジン型式 | 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒 | 空油冷4ストロークDOHC4バルブ水平対向2気筒 |
ボア×ストローク | 98.0mm×79.5mm | 101.0mm×73.0mm |
最高出力 | 80.9kW(110ps)/7250rpm | 81kW(110ps)/7750rpm |
最大トルク | 114.1N・m(11.6kg-f)/6000rpm | 120N・m(12.2kg-f)/6000rpm |
圧縮比 | 11.0:1 | 12.0:1 |
燃料供給装置形式 | フューエルインジェクション | フューエルインジェクション |
燃料タンク容量 | 23L | 20L |
車両重量 | 261kg | 229kg(オプション装備除く) |
変速機形式 | 6速リターン | 6速リターン |
Fブレーキ | 油圧式ダブルディスク | 油圧式ダブルディスク |
Rブレーキ | 油圧式ディスク | 油圧式ディスク |
Fタイヤサイズ | 110/80-R19MC 59V | 110/80-R19 |
Rタイヤサイズ | 150/70R17MC 69V | 150/70R17 |
カラー | ビビッドパープリッシュブルーカクテル5、 シルバー3 | マグマレッド、アルピンホワイト、 オストラグレーメタリックマット、 サファイアブラックメタリック |
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