掲載日:2011年01月28日 プロが造るカスタム
“カフェレーサースタイル”(Cafe Racer Style)というカテゴリーは、カスタムのいち分野であると同時に、カスタムの流れに大きな影響を与え続けてきた。元々は1960年代、バイク界で英車=ノートンやBSA、トライアンフなど=が全盛を誇っていた頃が発祥。それよりも前に当地で興ったロックとバイクがシンクロし、バイクに乗るロッカーズがたまり場にしているカフェに行く。そこでバイクを披露し自慢し、あるいはそこに行くまでに速い、格好いいのを至上だとして改造=カスタム化を図ったところにある。その総本山はロンドンのエースカフェ(Ace Cafe)。低いハンドルや長めのタンクにはじまるレーシングスタイルを採り入れたのが、その主流でもあった。
このムーブメントは1970年代には北米や日本にも及び、当時はまだ珍しかったカウリングを車体にまとい、タンク、シートカウルなど外装パーツの大部分をオリジナルに変更したカフェレーサーたちは、強烈なオリジナリティを全身から放っていた。1970年代後半にヨーロッパで不動の人気を得た耐久レースからの影響もあって、とくにヨーロッパのビルダー、エグリやセガーレ、ビモータなどは、カフェレーサーにとっても代表的な存在となった。
この車両は、かつては上質の単品パーツを製作し、コンプリートバイクまで手がけていたエフェクトの車両。手がけていた、というのは、今では車両製作やパーツ装着業務は行わず、パーツ製作や自転車系に転身したからだ。そうは言ってもこの車両の価値が下がるわけではない。その詳細を見てみよう。
冒頭の解説にもあるような、往年のヨーロピアン・カフェレーサースタイルを強く意識して作られているのだが、ベースになったのは、スズキGS750E。カワサキZ1/Z2を細かく分析した上でスズキが送り出した初期の4ストローク・ビッグバイク、GS750に、1970年代終盤に純正採用され始めたキャストホイールを履いたネイキッドモデルだ。カスタム作業自体は1990年代前半から始まり、およそ8年をかけて完成。当の製作者であるエフェクトの林さんによれば、着手してほどなくセガーレ車の国内輸入が開始されたため、製作を中断していたとのこと。つまり、その後イメージを一新してリメイクされたもの、というわけだ。
カスタム内容はその通りヨーロピアン・カフェの基本に沿ったもので、ホイール、外装パーツ、EXシステムなどをオリジナルに変更するといった作業が中心となっている。先に述べたヨーロッパのビルダースタイルでは、日本製パーツはエンジンのみで、あとはフレームからそっくりオリジナルに変えてしまうというパターンも多く見られた(今でもエンジンを社外に頼るような少量生産メーカーは同様の作りを見せる)が、ここではそこまでの大幅な変更はせず、'70年代のプロダクションレーサーもしくはヨーロッパ耐久レーサーと伝統的カフェレーサーの中間的フォルムをうまく表現。仕上がりもまるで工芸品を思わせるような、精緻で美しいものになっていて、いい意味でベースが分からないほどと言える。2000年代に入ってからのモデルではほとんど採用されなくなったデュアルヘッドライト・カウルは、改めて見ると懐かしさを超えて、新鮮でさえある。
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