前回の試用インプレッションでは、いろいろなシチュエーションを想定した「インカムで広がる楽しみ」を探りながら【SENA SMH10】 の性能と使い勝手をテストした(結果は 前回の記事 をご参照ください)。今回は実際に使う場面で、いかに「道具として使えるのか?」ということをテストしてみようと思う。
試用する商品は前回ご紹介した「シングルパック」2セット分が1セットになった「デュアルパック」。これは主要構成部品(メインユニットやクランプユニット)のみならず、細かい付属パーツもしっかり2人分含まれ「シングルパック」を2つ買うよりずっとお得なパッケージになっている。これならタンデムやペアツーリングはもちろんのこと、複数人のバイク仲間で走ることが多い場合など、各々がひとつずつ購入するより、みんなで「デュアルパック」を数セット購入し、費用をシェアするれば安く済ませることが可能だ。
今回はその「デュアルパック」を編集スタッフ2名で仕事に使ってみた。2人同時に会社を出発し、郊外の取材目的地を目指して途中までは並走、その後別行動とし、決められた時間に目的地で合流する、という流れだ。道中ではお互いの現在地や進捗状況などこまめに連絡をとる必要がある。
実際のシーンでどれだけインカムを活用出来るのか? その模様を通じて 【SENA SMH10】 の実力をご紹介しよう。
仕事で使う以上「道具」に要求されるポイントは高くなる。確かな通信性能や確実な操作性はもちろんのこと、それ以前の準備段階でも、時間短縮のためセットアップはイージーなほどありがたい。「道具」とは誰でも簡単に使えなければ意味が無いのだ。
さてペアリングだが、解りやすいよう1台を中心に考えてみよう。使う機能は「インカム通信」、「携帯電話の着信・通話」、「GPS ナビゲーションの音声案内」、それにオマケで「音楽鑑賞」の4つ。その全てを機能させる方法として、インカム通信は別として SMH10 と携帯電話を Bluetooth 対応の GPS ナビゲーションにペアリングさせることにした。つまりナビを介して機能を集約させるという考えだ。
相変わらずペアリングに手間はかからず、なんの説明も必要としない…。強いて注意点を挙げるなら、ペアリングが上手くいかない場合は一旦周辺の Bluetooth 機器をオフにすることと、一度記憶したデバイスに再接続出来ない場合は、そのメモリを削除し、改めてペアリングをすることくらいだ。
電子機器アレルギーの人間としては、それぞれを機能させる構図にアタマが混乱することもあったが、作業自体はいとも簡単に終了した。
ちなみに、ヘルメットには SHOEI X-9 と SHOEI X-12 を使用した。いずれも静粛性能に優れたフルフェイスタイプのヘルメットで、移動中の通信を考慮してのセレクトだ(前回のテストでヘルメットの静粛性能の重要性を認識)。SHOEI X-12 の場合、安全機能としてチークパッドが第三者の手で取り外せるようになっているため、その構造上クランプユニットのバックプレートが挿入出来なかった。そのため、クランプユニットの取り付けには付属の「貼付取付用アダプター」を使用した。
複雑怪奇と思っていた通信機器のセットアップだったが、思いのほか準備はスムーズに終えられたため、出発にも余裕が出来た。スケジュールに押されるとロクな事が無いが、そういった意味においても「良い道具」だと実感した次第。
出発してから別行動に移るまでの数キロの走行区間で、インカム通信でスケジュールの確認などを済ませる。クルマ移動では当たり前のことだが、バイク移動でもストレスなく普通に会話が出来ることに改めて驚いてしまう。
一旦別れた後しばらく高速道路を淡々と走り続けたが、携帯電話に保存してあった音源を BGM に、クルマさながらの快適な移動となった(前回テスト済)。
しばらくしてヘッドセットから携帯電話の着信を知らせるビープ音が鳴り、音楽が途切れる。メインユニット後方のフォンボタンを親指で短く押して通話を始める。ここで気になったのが、音声自体はハッキリと聞こえるものの、会話のキャッチボールに若干の時差が生じるという点だ。もしかしたらナビを中継しているせいかもしれないが、それが原因かどうかは未確認。それからフォンボタンの位置だが、SHOEI X-9 に取り付けた場合、ヘルメット装着状態ではクランプユニットが前下がりとなってフォンボタンは自ずと上を向くため、左手親指が届きにくいと感じた(取り付けるヘルメットの形状によって異なるのであくまでもご参考まで)。
高速道路から郊外へ一気に移動し、インターチェンジを降りる。見知らぬ土地の一般道を走るので GPS ナビゲーションの音声案内を開始し、再び走り始めた。ヘルメット内にナビ音声が流れると、まるでクルマの室内空間のように感じる。クリアな音質はこういう場面でも心にゆとりを与えてくれるものだ、と思うのは自分だけだろうか。
約束の合流地点に到着するが、まだスタッフの姿は見られない。バイクを停めて携帯電話の着信をチェックすると不在着信履歴が1件あった。たまたまナビ音声案内中だったので通話にならなかったのだろう。初期設定ではナビ音声が最優先されるのだ。
「もしも〜し」
ヘルメットを脱ごうとすると、突然スタッフからインカム通信が入った。姿は見えないが声は聞こえる!? そういえば、別れる際にインカム通信をオフ(ジョグダイヤルを1回押す)にしなかったので、音声認識応答機能がアクティブになっていたのか…。それにしてもビックリした。
「こちらは到着しています。今どのあたりですかー?」
「○○○交差点の信号を過ぎたところです」
その距離およそ500メートル。郊外とは言え遮蔽物が無いわけではないのに、しっかりと声が聞こえる。結局、東京を出発してから目的地までの約3時間、ヘルメットを脱がなかったことになる。
今回の試用テストの結果として、お互いバイク移動にもかかわらず、行動を確認し合うことが出来たおかげで、決められた時間にどちらか一方が遅れる、もしくは早過ぎることで生じる待ち時間を短縮することが出来た。仕事をするうえでこれは大きなメリットだ。そしてその間、SMH10 の使用に関してストレスを感じることは無かった。
すでに多くのユーザーが活用している【SENA SMH10】だが、通信の繋がり易さや音質の良さはもちろんのこと、やはり操作のイージーさが最も高い評価を得ているようだ(メーカー公式サイト SMH10 blog ご参照)。実際、グローブ装着状態でもこの大きなジョグダイヤルは「回す/押す」という動作が指先の感触に伝わり易い。メインユニット後部にあるフォンボタンも然り。さらにペアリングや通信切り替え時のビープ音のレスポンスも良く、ヘルメットを被ったまま、メインユニットのインジケーターを見なくてもどういう状態なのかが解り易い。そしてすべての操作を2つのスイッチでカバー出来るところが【SENA SMH10】最大の特長と言えるだろう。
前回のインプレッションに引き続き、今回は実際の使用シーンを通して「道具としての実用性はどうか?」をテーマにテストした。通信機器の進化は日進月歩だが、現状で【SENA SMH10】に対する不満はほとんど無かった。強いて言うなら、電子機器アレルギーの編集スタッフが、未だ到達出来ないスペック、機能があるのに活用しきれていないという点。もし Bluetooth インカム通信を使って自分のバイクライフをもう少し豊かに、楽しみたいと思うなら、通信相手や仲間と膝を付き合わせ、事前にその使い方をじっくり研究することをオススメする。
最後に、その「道具としての実用性」という点で3つのメリットを挙げてみよう。
【SENA SMH10】とはこういうモノ
■公式専用サイト
製品についてのあらゆる情報が集約され、インカム購入を考えている人にとって非常に有益。
■カタログ請求
■キャンペーンサイト
■海外で高い評価
“webBikeWorld.com” という海外サイトでの詳細なレビューが日本語に翻訳されている。
■オプションも充実
【SMH-A0302】ブームマイク、ケーブル型マイクの着脱が可能なクランプユニット。ヘルメット形状に応じて使い分ける。
【SMH-A0303】ブームマイク、イヤホンジャック付きクランプユニット。内蔵タイプとは別のイヤホンを活用したい際に。
【SMH-A0304】SMH10専用の総合型クランプユニット。あらゆる用途に対応するよう、上記2つの特徴を統合したもの。
■商品は2種類
ラインナップは1人用セット(2万8140円)と2人用セット(4万9140円)の2種類。
■主要パーツ
シングルパックを開けるとヘルメットに装着する主要パーツが一番上にセットされている。
シングルパックが2セットで1セットになったお得なパッケージ。細かい付属パーツも含む。
■付属パーツ
各パーツの詳細は専用サイトをご確認いただきたい。これに取扱説明書が同封される。
デュアルパックに含まれるパーツはシングルパックの2倍ながら、価格はリーズナブル。
■装着方法
メーカーが推奨するのはクランプを使った固定。ヘルメットによっては装着し辛いものもある。
■タイプ別装着例
SHOEI X-9 (写真上)と Arai SZ-F (写真下)の装着例。余計な装飾も無くシンプルなもの。
■1回の充電で連続12時間通話!
充電はメインユニットをクランプユニットから取り外して付属の充電用パーツで。