バイクはバランスの乗り物とは言うものの、実際に走っている時に意識的にバランスをとっている感覚は薄い。だが、バイクを操る上でバランス感覚が重要なことは言うまでもない。そんな、バイクに必須のバランス感覚を遊びながらトレーニングできるアイテムがある、それがトラッパーだ。新しいストリートスポーツとしても注目の、トラッパーの魅力に迫る。
バイクから、エンジンやタイヤを取り外し、フレームだけにしたような妙な物体。一体これが何かというと日本発の全く新しいスポーツ、その名はトラッパーだ。トラッパーはバイクのように跨り、様々なアクションを楽しむスポーツ。新感覚のアミューズメントとして、現在人気急上昇中なのだ。
トラッパーの製造販売元である、ぱわあくらふとのホームページでは、エキスパートライダーによって見事なトリックが披露されるデモムービーを見ることができる。スケートボードやパルクールといった、ストリート系アクロバットスポーツの新ジャンルとして今注目の存在。だが、こうした盛り上がりは実は想定外のことなのだと、開発者であるぱわあくらふの小玉代表は語る。
「最初はオモチャとして作ったんですよ、バイクっぽく遊べるオモチャ。バイク屋さんで、作業待ちのユーザーさんが時間つぶしに遊べるようなもの、そんなイメージでした。自転車の練習に使われるものらしいんですが、ヨーロッパの子供用の遊具で似たものがあるんです。それをトライアルバイクのディメンジョンで作ってみたのがトラッパーです。実際に遊んでみたら、トライアルで必須のテクニックであるフロントアップや、ホッピングなどのボディアクションが、とても理解しやすいことに気づいたんです。これは、トレーニングに使えるなあ、と考えたのがトラッパーを製品化したきっかけです」
事実、トラッパーのトレーニング効果は高い。静止状態のバランス感覚が欠かせないトライアルだけでなく、バイクという乗り物全てに通じるトレーニングを走行せずに行うことができるのだ。バイク1台を置けるスペースさえあれば、楽しめるのがトラッパーなのだ。
「バイクがコーナリングを開始するきっかけは、バランスを崩すことから始まるんです。トラッパーではアンバランスを楽しんで欲しいですね。遊んでいるだけで、ステップワークでマシンを操る感覚を身につけることができますよ」
しかし、話を聞いているだけではトラッパーというアイテムの価値は理解できない。ここは実際に試して見るに限ると、レポーターがトラッパーのライディングにチャレンジしてみた。インストラクターを務めてくれたのは、MFJ全日本トライアル レディースクラスに参戦中の女性トップライダー小玉絵里加選手。絵里加選手は、この企画でモデルも務めてくれている”美人すぎるトライアルライダー”なのだ。
トラッパーに跨ってみると、最初は両足をステップに乗せることすらおぼつかない。バイクで走行中、止まりそうな速度でバランスを取るときにステアリングを左右に振ったりすることがある。だがそれでは、静止状態ではバランスを取ることはできないようだ。どうしたものか?と悪戦苦闘していると、絵里加選手が「膝を使ってください」とアドバイスしてくれた。
そこで、膝に余裕を持たせてみたところ、ほどなくスタンディングでマシンを直立させることができた。正しい操作を行うことで、ちゃんとマシンが応えてくれる。その点では、トラッパーとオートバイは共通だ。そして、ひとつの課題を達成して得られる満足感はスポーツそのものだ。トラッパーの楽しさ、奥深さはそこにあると感じられた。シンプルな車体からは想像できない、奥深い楽しみ方がある。これは面白い!!
「バイクにはエンジンやサスペンションがあって、ライダーの望むアクションをサポートしてくれています。トラッパーには何もついていませんから、ライダーが正しい操作をしないと、思うように動いてくれません。トラッパーで練習すると、ボディアクションがどのようにバイクに働きかけるのかが理解しやすいので、バイクに乗った時の操作にも活かせると思います」と絵里加選手は語ってくれた。
ライディングに必要なボディアクションを、走行しなくても身につけられるトラッパー。これはトレーニングマシンとして実に有効。そして、それ以上に遊んで楽しいというのが素晴らしい。ファッショナブルな新スポーツとしても見逃せないトラッパーは、バイク乗りなら要チェックアイテムだ。
簡単な構造に見えるトラッパーだが、細部のアップデートを繰り返し、現在のモデルは初代から数えると3世代目にあたる。2世代目では軽量化が進められ、現行モデルではフレーム形状の見直しによる剛性アップ、各部のアジャスト機構の採用、パウダーコーティングによる塗装品質の向上、ステアリング部へのベアリング装備、オプションパーツ設定によるカスタマイズの自由度も上げられているのだ。フレームカラーも2タイプから選択可能。購入してそのまま楽しめる標準タイプと、好みのパーツで組み上げるセレクトベースタイプが用意されている。