「エンジンにとって、ガソリンと空気はゴハンみたいなモノ。きちんとした食事のおかげで人が健康でいられるように、適した燃焼に調整してあげることが大切なんです」
インジェクションチューニングについて語るのは須川真澄さん。三重県松阪市で『サニーサイドガレージ』を主宰している。ツインカムエンジンを搭載したビッグツインモデル、トランスミッション5速を採用したスポーツスターを中心に、販売、整備、点検、車検、修理、カスタム、チューニング、下取りまで幅広く対応。地元のハーレーユーザーはもちろん、近年では県外のユーザーから支持もされている。そんな須川さんがバイクに乗りはじめたのは16歳の頃だっだ。
「最初、スクーターを買おうと思っていたんですが、ホンダのドリーム50にひと目ボレしてしまったんです。はじめてのシフト操作に苦労しました(笑)」
バイクのおもしろさに興味を持つようになり、その2年後、18歳で最初のハーレーを購入。1996年式XL1200Cを手に入れたことが、メカニックの道を進むキッカケとなった。
「当時、スポーツスターは『ビッグツインに乗れない人のバイク』と考えられることが多かったんですね。そんな時に雑誌で、ワンメイクレース『スポーツスターカップ』で優勝した人が表彰台に上がっている記事を見たんです。こんな世界があるんだ!って衝撃を受けました」
その人物が『BURN ! H-D SPORTS』の代表、奥川潔さんだ。高年式モデルのハーレーを中心としたメンテナンス&チューニングショップで、キャブレターやインジェクションのセッティング、エンジンチューン、足まわりのセットアップをおこなうことで、全国的に知られた存在だ。上京後、奥川さんを慕ってショップに通ううちに勤めるようになったのが24歳の頃。メカニックとして経験を積み、故郷で独立することになったのだ。
「ちょうどスポーツスターにラバーマウントが採用されたり、全モデルがインジェクション化された時代でした。奥川さんは新しいことを否定するのではなく、積極的に取り組んで、いかに楽しいバイクにするかを常に考えていましたね。その仕事に一緒に携われた事が今の自分の糧になっています」
インジェクションは燃料供給を電子制御するシステム。チューニングはレースなどで用いられる印象が強いが、単なるパワーやスピードをアップさせることだけではなく、燃費を良くしたり、エンジンの寿命を延ばしたりすることも可能。鼓動感が魅力とされるハーレーに関しては、低回転での走行を扱いやすくしたりすることもできるのだ。
「サーキットで走行してるイメージが強いお店だと敷居が高いと感じる方も多いかもしれませんが、サニーサイドガレージではバイクにとって ”走る、曲がる、止まる”の基本はとても大切だと考えています。サーキット走行は、お客様に安全で品質のよい部品を提供するための性能を試す機会でもあるんです」
そして、それはバイク自体の安全を提供する事につながっていくと語る。足まわりのセッティングやカスタムも同じこと。それぞれのモデルの性質や特性、ユーザーの走り方に応じたパーツチョイスとセッティングが大切なのだ。“走る、曲がる、止まる”という時に、バイクをまるで自分の体ように思い通りに動かせれば、安全性だけでなく楽しさも増す。同店の豊富な知識と経験、高い技術力が、安全かつ楽しいバイクライフを実現してくれるのだ。
地方運輸局長から認証を受けた認証工場である同店が扱っている販売車両は、エンジン、外観、足まわり、フレーム、電気・保安部品などを細かく評価し、コンディションがよく信頼性のある車両を厳選。カスタムやチューニング、メンテナンスにおいても、安全と信頼性を重視している。
「ハーレーは基本、雰囲気重視で乗るバイクなので ”フロントホイールを大径化したい” ”車高をすごく低くしたい” などという依頼が多くあります。中には走行安定性に欠ける場合もあるので、部品の良し悪しを説明させていただいた上でお客様と一緒にカスタムの方向性を考えていきます」
それぞれの楽しみ方や走り方、車種に応じて、オーナーと相談しながら理想のハーレーを追求していくのだ。
「インジェクションのコンピューターチューニングでは、データに走り方のクセなどが全部記録されます。“自分は(スロットルを)開けて走っていない”と思っていても、実際には開け過ぎていることもあるんです。なかなか気づけない部分を改善できるのも魅力ですね」