バイクへの信用は
自分への信頼から
このスマテクも連載開始から半年が過ぎ、そろそろ折り返し地点。そこで今回はバイクとの接し方について考えてみたいと思います。
バイクを上手に乗りこなすための心得として「人車一体」という言葉を聞いたことがあるでしょう。これは元々「人馬一体」が由来かと思われますが、乗馬でも馬との信頼関係を築くことがまず大事だと言われます。そして、馬の緊張を解くためにはまず自分が心を開いてリラックスする必要があるそうです。
もちろんバイクは感情を持たない機械ですが、それを操るライダーの精神状態を色濃く投影する乗り物でもあります。「バイクをもっと信用しよう!」などと書くと、より深くバンクさせて限界の走りを…などと思われがちですが、そうではありません。過度な緊張や怯えを持たず、リラックスして乗りこなそう、という意味です。 |
| 信用して性能を引き出す 前後連動ABS付きブレーキシステムの威力は絶大。雨でも砂地でも路面状態にかかわらず、いつでもフルブレーキがかけられます。ただし、乗り手がこのシステムを信用できればこそ性能が活かされるもの。万が一に備えて、ABSを体験しておくことが大事。 |
と言っても、最初はなかなか不安を拭い去れないもの。スロットルは開けられないし、ブレーキも強くかけられない。どこまで寝かせていいのか分からない…。それは人間の正常な反応です。未知の領域への恐れは誰もが持っているものですし、それがあるからこそ抑制された運転が出来るわけです。
では、不安や恐れを払拭するにはどうしたら良いのか? それにはバイクにたくさん乗って扱いに慣れると同時に、バイクという乗り物についての理解を深めることが手助けになります。
たとえばブレーキングでは、2輪の場合、強くかけ過ぎると車輪がロックして転倒しやすくなります。もしロックしたら解除しないといけませんが、たとえ前輪がロックしても、車体が垂直であれば即転倒することはありません。これがABS搭載のバイクの場合なら、車体が垂直であればブレーキを思いっきり強くかけても大丈夫ですし、ウェット路面でもフルブレーキで安全に止まることが出来ます。
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| 「脚」で荷重感覚を知る 「どこまで倒し込めるか」は、サスペンションの使い方やタイヤのグリップ特性などを理解していないと答えは見つかりません。試しにスタンディングで曲がってみてください。脚を通じて遠心力やサスペンションの沈み込みなどの荷重感覚が理解し易いはずです。 |
こうした機械的な特性を知っておけば、バイクを信頼して性能を引き出すことが出来ます。ただしロックした経験が無ければ、それが「ロック状態」と気付くことが出来ないでしょうし、ABSも作動させた経験が無ければ、どこまでレバーを握るとそうなるか見当がつかないでしょう。
そこで経験がものを言うわけです。経験値を安全かつ効率的に高めるためには、クローズドコースでのトレーニングが最も有効なのは言うまでもありません。機会があればライディングスクールなどに参加してみるのもおすすめです。
バイクを信用出来るかどうかは、結局のところ自分の知識やスキルを信用出来るかどうかにかかってくるのではないでしょうか。そのためには自分を高める努力も必要でしょう。そして、私たちが謙虚な気持ちで向き合えば、バイクはきっと信頼に応えてくれるはずです。