重いバイクほど
制動距離は伸びる!?
排気量が大きいバイクは、それだけエンジンの重量も大きくなりますし、発生するトルクも増大します。これに合わせて、車体も頑丈に作らなければなりません。つまり排気量が大きくなるほど、バイクは重くなる宿命なのです。
重量が増すとどうなるでしょうか。ブレーキングにおいては、止まりにくくなるということです。バイクの動きは物理の法則に支配されています。「物体の運動エネルギーは質量に比例し、速度の2乗に比例する」という法則を学校で学んだ記憶があるかと…。
たとえば車重が200kgのバイクの場合、100kgのバイクに比べるとブレーキングには2倍の距離が必要だということ。ちなみに速度が2倍になれば、計算上の制動距離は4倍になってしまいます。それでは困ったことになるので、ハイパフォーマンスなバイクはそれだけ強力なブレーキシステムを装備していますし、重量級マシンはABSや前後連動ブレーキなどのアシスト機構によって安全性を高めています。
ただし、ブレーキングはそれを操るライダーの技量によって大きく左右されます。たとえABS付きであっても、それを稼働させられなければ意味がありません。さらに言えば、ABSは制動距離を縮めるものではなく、仮にロック寸前の状態をキープできれば制動距離はもっと短く出来ます。高性能なブレーキシステムであっても、結局それを操るのは人間なんですね。
大排気量マシンはジンワリと 大排気量マシンはその性能に見合ったブレーキシステムを備えています。特にラジアルマスター&キャリパーを備えた最新モデルでは、いきなり強く入力すると減速するより先にホイールの動きを止めてしまうほど。つまり簡単にロックしてしまいます。これを防ぐためにはちょっとコツが。スロットルを戻しつつブレーキレバーの遊びをとった状態から、まずは軽くレバーを引いてフロントフォークを沈み込ませ、前輪を路面に押しつけた状態を作ります。そこからジンワリと握り込んでいくことでタイヤの面圧を高め、本格的な制動に入ります。いきなりガツンとかけるとロックしやすく危険! |
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小排気量マシンはメリハリよく 250cc以下のクラスでは、ほとんどがシングルディスクブレーキかドラムブレーキを装備しています。これは排気量とパワーに見合った適正な制動力を与えるためであり、いたずらに軽量級バイクに高性能ブレーキを装着してもかえって扱いにくくなってしまいます。シングルディスクの場合、効き味はダブルディスクより穏やかですが、そのぶん制動力は劣るので、しっかりかけないと制動距離は思いのほか伸びてしまいがち。操作の基本は大排気量マシンと同じですが、最初からある程度強めの入力が可能な場合も多いようです。ただし、雑にかけるとロックしますので、あくまでも繊細に! |
短かく止まれる理由
車重167kgのストリートトリプルRと、車重122kgのXR230で停止距離を比較してみました。結果は意外や意外! 車重のあるストリートトリプルRの方が、軽いXR230よりも短かい距離で止まってしまいました。停止距離のデータはメーター読みで50km/hから減速開始したもので厳密ではありませんが、何回やっても結果が逆転することはありませんでした。これは明らかに強力なブレーキシステムとハイグリップタイヤのおかげ。車体の姿勢変化を制御するサスペンションの性能も関わってきます。ただし、路面状況やメンテナンス状態、ライダーのスキルによってこの値は大きく変わってくるものなので、あくまでもご参考程度に。
ABSを生かす Kシリーズに装備されているEVOブレーキ(前後連動ABS)+デュオレバーの組み合わせは実に強力で、250kgを超える車体を極めて安定した状態のまま一瞬で減速させます。ABSはホイールをロックさせずにどんな路面でも安全に減速できる装置ですが、制動距離を縮めるものではないことは本文でも触れたとおり。それでも、おそらく99%のライダーはABSを作動させた状態でブレーキングした方が、より短かく安全に止まれるはずです。危険回避などで急制動が必要な場合は、迷わずABSを効かせるのが賢明です。 |
| 人間が性能を引き出す ストリートトリプルRは、トライアンフ独自のパワフルな3気筒エンジンと、軽量・コンパクトな車体を活かした高い運動性能が魅力です。ブレーキにはフロントにラジアル式のマスターシリンダー&キャリパーを装備していて、強力な制動力とコントロール性を兼ね備えています。たとえばコーナー進入では、フロントブレーキを少し残しながら倒し込んでいくことでより高い旋回力を引き出すことも可能。とはいえ、ABSなどのアシスト機構は持たないので、そのポテンシャルを引き出すのはライダー自身になります。 |