3段階でかける
イメージを持とう!
ブレーキのかけ方には目的別に大きく分けて2つの方法があります。ひとつは「止まるためのブレーキ」、もうひとつは「曲がるためのブレーキ」です。
前者はいわゆる急制動で、なるべく短い時間と距離で減速・停止する方法。この場合の目的は危険回避であり、交差点での急な飛び出しなどに対応するためのスキルになります。後者はコーナーへの進入などで減速する場合のブレーキングで、そのコーナーに見合った速度に調整することが目的になります。
止まるためのブレーキでは、前後のブレーキを時間差でかけていくことがポイント。バイクのブレーキは通常、前後別々に操作するシステムになっていますが、このメリットを最大限生かしましょう。まずはリアブレーキをかけて車体を安定させてから、フロントブレーキを軽くかけてサスペンションを沈み込ませ、タイヤが路面に押し付けられるのを感じながら、レバーをさらに握り込んでいきます。
まとめると、リア→ フロント弱→ フロント強の3段階の手順でかけていくことになります。急制動でそんな悠長なことを言っていられるの? と思われるかもしれませんが、安全かつ確実に減速・停止するためにはこのイメージを体に刻みつけておくことが大事。慣れてきたら、各操作の時間差を限りなく詰めていくことで、制動距離をより短くすることができます。まずは正確にゆっくりと操作しながら、このプロセスに馴染んでいきましょう!
停止直前に少し緩める 交差点の信号停止など、普通に止まる場合は、急制動する必要はありませんし、むしろ追突されかねず危険です。この場合は前後ブレーキをスムーズにかけて、速度が落ちてきたら停止直前にフロントブレーキを少し緩めながら止まるのがコツ。こうすることでフロントのリコイル(反動)を緩和させて、安定して停止することができます。 |
| 3段階で制動力を引き出す 車体を安定させながら強い制動力を引き出すためには、3段階での操作イメージが大事。リアブレーキでリアサスを沈み込ませて車体を安定させた後、フロントを軽くかけて荷重をスムーズに前方に移動させ、フォークが沈み込んだところで入力を強めていきます。リアからフロントへの穏やかに姿勢変化に注目してください。 |
①リアブレーキは一定 リアブレーキは足で操作するため入力加減が分かりずらく、ロックしやすくなります。ブレーキペダルへの入力はほぼ一定とし、踏み込みすぎないのがポイント。親指の付け根あたりで操作するとけっこうデリケートな入力ができます。 |
| ②レバーを軽く引く フロントブレーキはまずレバーをさっと引いて遊びを取ると同時に、フォークがフルボトムする手前ぐらいまで沈み込ませるイメージで軽く入力。ここで一気に握り込むと前輪ロックなどのリスクが高まるので注意しましょう。 | ③さらに握り込む フォークが縮んでタイヤが路面に押し付けられていく手応えが伝わってきたら、スムーズかつ速やかにレバーを握り込んでいきます。レバーにかける指は何本でもいいですが、安全のためにはグリップにも指をかけておきたいところです。 |
ABSは全力で作動させる 最近ではABSや前後連動ブレーキを採用するモデルも増えてきました。ABSはブレーキがロックしたときに瞬間的に解除することで安定して制動できるシステムですが、こと急制動に関しては全力でかけてしまったほうが確実です。ABS作動時は厳密に言えば制動距離が少し伸びますが、特にパニック時にはABSを超えるブレーキテクを発揮できることはまず不可能だからです。前後連動ブレーキにはBMWのようにフロントをかけるとリアも効くタイプや、ホンダのようにリアをかけるとフロントの一部が効くタイプなどがありますが、いずれも理想的な制動力配分によって、急制動では大きな威力を発揮します。 |
| 強めたら一定入力をキープ 図は通常のブレーキシステムにおけるリアとフロント、それぞれのブレーキ入力をイメージ化したものです。縦軸の入力の強さに対して横軸は入力の時間を表しています。①②③は3段階でのブレーキ操作のタイミングですが、ポイントは前後ブレーキとも最終的に入力が一定となっていること。これはロック寸前のレベルという意味で、これ以上入力を強めるとロックしやすくなり、危険です。つまり、速度が高いときほど入力時間は長くなることになります。 |
前傾ポジションに対応する そのままレースに出られるほど強力なブレーキ・システムを持ったデイトナの場合、フルブレーキングでの減速力は相当なもの。前のめりにならないようニーグリップでしっかり車体をホールドするとともに、腹筋と背筋で上体を支えて、なるべく腕に力が入らないようにしましょう。目線も常に高く。反対に加速時はしっかり上体を伏せて、風圧を減らすとともに強力な加速力に置いていかれないようにするのがポイント。これはハイパフォーマンスな前傾モデルに共通のフォームです。 |
| サスストロークに対応する 990アドベンチャーのような足長バイクの場合、サスペンション・ストロークが大きく設定されているため、ブレーキングでのピッチング・モーションが非常に大きくなるのが特徴。連続写真を見ても加速時と減速時で車体の姿勢が大きく変化しているのが分かります。これに合わせてライダーも上体を加速時に前傾させたり、減速時に起こしたりするアクションを積極的に行うことで、バイクの大きな動きに対応しやすくなります。頭の位置がほぼ一定であることに注目してください。 |