精神的なゆとりが
まずは大事
目の前にコーナーが迫ってくるのにスピードが出すぎていて曲がれない! 頭の中は真っ白…そんな経験は誰にでもあるでしょう。また、ブラインドになっている交差点で横からいきなりクルマが飛び出すなど、予期せぬ状況に置かれたとき、人はパニックに陥ります。
パニック状態になると、つい反射的に強くブレーキをかけてしまい、その結果ブレーキがロックしやすくなります。強すぎる入力によって前輪や後輪が止まってしまう状態で、そうなるとタイヤは路面に追従できなくなり、グリップを失って滑り出します。前述のようなコーナー手前でのパニックでは後輪がロックしやすく、急な飛び出しに対しては前輪がロックしやすくなる傾向があるようですね。
後輪ロックの場合は比較的安定性を保ちやすく、車体さえ直立していればそのまま真っ直ぐ進むことが出来ます。これに対して厄介なのは前輪ロック。前輪が完全に止まってしまうと、ハンドルが切れ込んで急激にバランスを崩し、最悪は転倒してしまいます。
もしロックしてしまったら、速やかにブレーキを緩めてバランスを回復させることが先決。早めに対処するためには、ブレーキがロックする「兆候」を見逃さないことがポイントになります。そして何よりもまず、そういう状況にならないようにすべきです。そのためには正確な速度の見積りや冷静な状況判断が大事。速度は控えめに、精神的にもゆとりを持って走りましょう。
後輪ロックは慌てない リアブレーキはブーツの底を通じてペダル操作をするため、入力加減が分かりにくく、どうしても後輪ロックしやすくなります。後輪がロックするとタイヤが路面と擦れて「キキーッ」や「シューッ」という音がするので、速やかにリアブレーキを緩めましょう。また、ホッピングといって後輪が跳ねることもありますが、これもロックの予兆です。後輪ロックしても車体が直立であれば真っ直ぐ進むだけなので、慌てずに対処すれば大丈夫です。 |
| 前輪ロックは即リリース 前輪ロックの場合、急激にバランスが崩れるためより速やかな対応が必要になります。ロックの兆候をいかに早く感知するかがポイント。ロックしたときにタイヤから発生する「スキール音」が鳴らなくても、ハンドルがガクガクするような細かい振動を感じたり、急にフロントタイヤのグリップ感が薄くなったらロック寸前です。前輪ロックの場合はすぐにブレーキを緩めることが鉄則。完全にリリースしなくてもグリップを取り戻したら、再びレバーを握り込んで減速します。 |
大きくスライドしてしまったら… 後輪ロックすると、ほとんどの場合リアが横に流れていきます。公道では路面にカント(傾斜)がついているため、車体が傾いているとさらに急激にスライドが始まります。早めに感知してリリースするのが理想ですが、大きくスライドしてしまうとかえってハイサイドなどの危険な転倒になりかねません。後輪のスライドをコントロールするには、ハンドルを進行方向に真っ直ぐ向け続けるのがポイント。ハンドルを切ってしまうと、そのまま転倒しやすくなります。 |
| 急な飛び出しは「逆操舵」で回避 ブレーキが間に合わない急な回避が必要なケースなどでは「逆操舵」テクニックが有効です。逆操舵とは、曲がりたい方向とは逆にハンドルを切る操作のこと。写真は路肩のほうから何かが飛び出してきたという想定で、右側に回避したいため右手で一瞬ハンドルを押しています(入力タイミングを分かりやすくするためハンドルから手を放しています)。前輪が一瞬逆に切れてから右に切れ直している様子がお分りでしょうか。回避したら、落ち着いて減速しラインを修正します。 |
足長バイクは足着きに注意! 990アドベンチャーのような足長バイクの場合、停止時の足着きに気を遣いますよね。大型トラックなどが通る幹線道路の交差点付近などは、路面に深い轍が出来ていることもあるので特に注意が必要。荒れた路面などで足をすくわれないよう、停止直前になったら予め腰をずらして片足を確実に着ける体勢を作っておくことがポイントです。両足をツンツンで着くよりもずっと安定していて安全。車体を傾けず、ハンドルを真っ直ぐにして止まるのがコツです。 |
| 強力ブレーキは前転に注意! 強力なフロント・ブレーキとハイグリップ・タイヤを装備した、デイトナ675のようなスポーツ・モデルの場合、急激に入力を強めていくと前輪ロックする前にリアが浮き上がってくることもあります。そのままレバーを握り込んでしまうと前転するケースも…。特に腕を突っ張ってハンドルに体重をかけすぎると危険です。穏やかなブレーキ操作を心掛けるとともに下半身ホールドをしっかり行い、荷重がフロントに集中しすぎないようにしましょう。 |