乗りやすくすれば
楽しさも倍増する
「最近どうも走りがぎこちない気がする」とか「いつも足元から滑りそうで怖い」などの不安を抱えながら走っていませんか? また、そう感じていても「自分がヘタだから仕方ない」と思い込んでいる方が意外と多いのでは…。
でも、それはサスセッティングに原因があるかもしれません。大型バイクで、特にハイスペックモデルの場合、サスペンションはノーマル状態でもかなりハードな設定になっています。簡単に言うと「固い」です。欧米人の体格に合わせて初期荷重を設定しているし、荒れた路面を想定してダンパーも強めにセットされていることが多いようです。
つまり、小柄な日本人がよく整備された日本の道を気持ちよく走るためには、セッティングが必要になるということ。「いつも滑りそう」と感じるのは、もしかしたら貴方の体重が軽すぎて、あるいは速度レンジが低いためサスペンションが十分に動いていないからかもしれません。また、以前と同じセッティングなのに「走りがイマイチ」と感じるのは、冬場でサスペンションの動きが固くなっていることが原因かもしれません。
サスセッティングとは、ライダーの体格や技量、路面や速度域、気温などの状況に合わせて「バイクをより乗りやすくする」作業のことです。自分のイメージどおりに走ってくれれば気分も爽快、安全マージンも高まりますよね!
フロントプリロード プリロードとは初期荷重のこと。停止状態でフロントフォークのスプリングが予め沈み込む量を決めます。ライダーの体重に加え、ブレーキング時のストローク量などが目安。フロントフォーク上側にアジャスターがあり、ケガキ線などで調整量を確認します。工具はボックスレンチやスパナ等。 |
| フロント伸び側ダンパー フロントフォークが伸びるときの速さを調整します。バイパス経路を流れるオイル流量を変えて減衰力を補正。アジャスターはフロントフォークの上側についていることが多く、左右で「伸び側」「圧側」に分かれるタイプも。工具はマイナスドライバー等を使用。 | フロント圧側ダンパー フロントフォークが沈み込むときの速さを調整します。フロントフォークの下側についていることが多く、最新スポーツモデルでは写真のデイトナ675のように低速側(LO)と高速側(HI)を備えるタイプも。工具はマイナスドライバー、ボックスレンチ等。 |
リアプリロード 停止状態でリアショックのスプリングが予め沈み込む量を決めます。主にライダーの体重(タンデム時や荷物積載時も含む)に影響を受けるほか、路面のギャップ通過時のストローク量などが目安に。カム式やダブルナット式があり、工具はフックレンチ、ピンスパナ等。 |
| リア伸び側ダンパー リアショックが伸びるときの速さを調整します。バイパス経路を流れるオイル流量を変えて減衰力を補正しますが、構造上、圧側ダンパーにも影響する場合が多くなります。リアショックの下側についていることが多く、工具はマイナスドライバー等。ダイヤル式もあります。 | リア圧側ダンパー リアショックが沈み込むときの速さを調整します。リアショックの上側についていることが多く、最新モデルでは低速側(LO)と高速側(HI)を備えるタイプも。工具はマイナスドライバー、ボックスレンチ等。ノーマルサスやツインショックではダイヤル式も多くなります。 |
| コーナリング中の姿勢をコントロール バイクの姿勢変化をコントロールするのがサスペンションの役割でもあります。ひとつのコーナーを例にとると、①ブレーキングによってフロントに荷重が移ることでフロントフォークは大きく沈み込み、逆にリアサスは伸びます。②ブレーキをリリースして倒し込んでいく過程でフロントフォークは少し戻り、リアサスは落ち着きますが、まだスロットルは閉じたままでフロント荷重の状態のまま旋回していきます。③コーナー後半でスロットルを開け始めるとフロントからリアに荷重が移り始め、フロントフォークが伸びてリアサスが沈み始めます。④さらにスロットルを大きく開けて立ち上がり。フロントフォークは伸び切り、完全にリア荷重になりながら加速していきます。 |
ブレーキング コーナー進入ではブレーキングによってフロントフォークが大きく沈み込みます。ここではフロントのプリロードの設定がポイント。プリロードが弱いと「底付き感」が出たり、強すぎると「突っ張り感」が出たり。圧側減衰も安定感に関わってきます。 |
| 1次旋回 フロント中心の旋回力で曲がっていく1次旋回では、まずスムーズに倒し込めるかが大事。ポイントはフロントのダンパー設定で、これが弱いとフロントがフワついたり、強いと倒し込みにくくなったり、とフロントの接地感に不安が出てきます。 |
2次旋回 リア中心の旋回力で曲がっていく2次旋回では、フロントからリアにスムーズに荷重が移っていくことが重要。リアのダンパー設定が弱いと腰砕け感が出たり、強いとリアサスが固まった感じになったり、いずれもリアの接地感に不安が出てきます。 |
| 加速 コーナーの脱出ではリアサスに荷重が集中。リアのプリロードの設定が弱いとギャップで「突き上げ感」が出たり、思ったより曲がらなかったり、強いとリアがいつも高い位置にある感じで「突っ張り感」が出たり。フロントの伸び側減衰も接地感に影響します。 |
| サスセッティングは工具選びから サスセッティングする場合、工具を使ってアジャスターを調整しますが、まず大事なのは「良品」を使うこと。車載工具などは最低限のアイテムしかありませんし、精度や強度も不十分なものが多いので、必要なものは買い揃えたほうが後々得します。もうひとつ大事なことは、専用工具を使うこと。たとえば、リアのプリロード調整にはフックレンチなどが必要になりますが、サイズが合わないとアジャスターを傷めてしまいます。ドライバーの長さや先端のサイズも、アジャスターの位置や大きさに合うものを選びましょう! |