今日から使えるライテク実践講座-「サーキット走行のスポ・テクとは?」

Text / Kentaro SAGAWA Photo / Satoshi MAYUMI  取材協力 /ライディングアカデミー東京  撮影協力 / トミンモーターランド
ライディングアカデミー東京」佐川健太郎の“スマテク”とは?
普段から役立つ実践的なノウハウや方法をレクチャーしてくれるのは、バイクライフをもっと豊かにするためのライディングスクール「ライディングアカデミー東京」の佐川健太郎校長。せっかく手元にある大型バイク、安全に走りを楽しみ、満面の笑みで1日を終えたいもの。そのためには、ライダー自身のスキルアップと安全意識の向上、環境へも配慮したスマートなライディングを目指したい。それが“スマートテク”なのだ。
PAGE01PAGE02PAGE03PAGE04

パートに分けて
シームレスで走ろう!

サーキット走行編もいよいよ大詰め。今回のテーマはコーナリングです。コーナリングを考えるとき、いくつかのパートに分けてみると整理しやすくなります。いろいろな考え方がありますが、ここでは「倒し込み」「1次旋回」「2次旋回」「立ち上がり」の大きく4つのパートに分けてみましょう。

 

「倒し込み」は前回解説したとおり、体重移動やステップワークを使って曲がるキッカケを作るパートです。車体が傾き始めたら続いて旋回に入るわけですが、これを前半の「1次旋回」と後半の「2次旋回」とに分けます。

 

1次旋回はフルバンクに至るまでの区間で、基本的にスロットルは閉じています。前輪に荷重が移動し、主にフロント主体で曲がっていく感覚。ここは最も効率的に車体の向きを変えることが出来るパートです。ただし、そのためには車体の向きが変わるのを「待つ」ことが大事。ここでスロットルを開けてしまうと、バイクはアウト側にはらんでしまいます。

 

2次旋回はフルバンクからコーナー出口へと向かう区間で、スロットルは徐々に開けていきます。スロットル・オンとともに後輪に荷重が移動。後輪にトラクションがかかることで車体は安定し、リア主体で曲がっていくイメージになります。ここでは繊細かつスムーズにスロットルを開けていくのがキモ。いきなりガバ開けすると車体姿勢を乱し、スリップを誘発する原因になります。

 

「立ち上がり」は車体がほぼ垂直になり、フルパワーで加速出来る段階です。あくまでも車体を起こしながら加速していくのがポイントになります。

 

4つのパートと言っても、それぞれに境目は無くシームレスでつないでいくことが大事。旋回中はバイクに身を任せるつもりで、極力リラックスして乗りましょう!

Practice

 

1次旋回はフロント主体

フロントブレーキを緩めながら倒し込んでいきます。ブレーキングで蓄えた前輪荷重をそのまま活かしてフロント主体の旋回力で曲がっていくのがポイント。1次旋回で効率的に曲げるためには、初期段階で最大バンク角まで持っていく必要があります。そのためにヒザ擦りでバンク角を探るわけです。倒し込みのキッカケ作りではイン側ステップに瞬間的に入力しますが、バンクしてからはシートに全面的に体重を預けるようにした方がバイクとの一体感も増し、旋回力も得られ易くなります。

 

2次旋回はリア主体

クリッピングの少し手前あたりからスロットルを徐々に開け始めます。それまで前輪にかかっていた荷重が後輪に移り始め、アンチスクワット効果により、リアに踏ん張り感が出てきます。トラクションによって後輪が路面を蹴るのを感じつつ、車体を起こしながら2次曲線的に徐々にスロットル開度を大きくしていきます。スロットル・オフからオンへの受け渡しをスロットルワークひとつでいかに繊細にコントロール出来るかがキモ。クリッピング通過時はすでに車体を起こし始めていることが大事です。

図はコーナリングの組み立てを表しています。ブレーキングから倒し込みの早い段階では、まだフロントブレーキを引き摺っている場合もあります。コーナー前半の1次旋回で最大バンク角に持ち込み、ここでバンク角を探るためにヒザを擦ります(赤い部分がヒザ擦りゾーン)。コーナー後半の2次旋回ではすでに車体を起こし始め、スロットルを開けながらクリッピングを通過。スロットル操作はあらかじめ「遊び」を取ってからジンワリと開けます。立ち上がりではさらに車体を起こしつつ、スロットルをワイドオープンにしていきます。※度数は各パートでのバンク角のイメージを表しています。

 

最大バンク角はクリッピングにあらず

左の図はコーナリングの組み立てを表しています。ブレーキングから倒し込みの早い段階では、まだフロントブレーキを引き摺っている場合もあります。コーナー前半の1次旋回で最大バンク角に持ち込み、ここでバンク角を探るためにヒザを擦ります(赤い部分がヒザ擦りゾーン)。コーナー後半の2次旋回ではすでに車体を起こし始め、スロットルを開けながらクリッピングを通過。スロットル操作はあらかじめ「遊び」を取ってからジンワリと開けます。立ち上がりではさらに車体を起こしつつ、スロットルをワイドオープンにしていきます。※度数は各パートでのバンク角のイメージを表しています。

 

立ち上がりで早く加速体勢に持ち込みたいときなどは、積極的に車体を起こしていく場合もあります。車体を起こすためのアクションとして、外足でアウト側ステップに入力したり、ハンドルをイン側に切ったりする方法がありますが、あくまでも補助的な動作。主体はスロットルワークです。

 

車体を起こしながら加速

立ち上がりで早く加速体勢に持ち込みたいときなどは、積極的に車体を起こしていく場合もあります。車体を起こすためのアクションとして、外足でアウト側ステップに入力したり、ハンドルをイン側に切ったりする方法がありますが、あくまでも補助的な動作。主体はスロットルワークです。

旋回中はどこに荷重するの?

写真では両手をハンドルから放していますが、ニーグリップなど下半身で車体をホールドしているため、上半身を保持していられます。旋回中もしっかり外足ホールドすることで、頭や上体の重さを間接的に前輪にかけていくことが出来ます。

下半身ホールドで前輪に荷重

写真では両手をハンドルから放していますが、ニーグリップなど下半身で車体をホールドしているため、上半身を保持していられます。旋回中もしっかり外足ホールドすることで、頭や上体の重さを間接的に前輪にかけていくことが出来ます。

 

写真のように両腕を突っ張ってしまうと、上体の重さがすべてハンドルにかかってしまい、バイクの旋回力を生み出す源であるセルフステアを阻害してしまいます。頭の位置も後退するため、効果的に前輪荷重を稼ぐことが出来なくなります。

腕を突っ張るとデメリットだらけ

写真のように両腕を突っ張ってしまうと、上体の重さがすべてハンドルにかかってしまい、バイクの旋回力を生み出す源であるセルフステアを阻害してしまいます。頭の位置も後退するため、効果的に前輪荷重を稼ぐことが出来なくなります。

 

コーナリングフォームの変化(スーパー・スポーツの場合)

①倒し込みではイン側ステップに荷重しつつアウト側のヒザでタンクをプッシュ。②旋回中は腰を大きくずらしたハングオフフォームのままシートに全体重をかけてしまうイメージです。③立ち上がりでは上体を多少イン側に入れつつ、アウト側ステップを踏んで車体を起こしていきます。

ネイキッドに限らず、旋回中はシートに全体重を預けるぐらいの気持ちでどっかりと座ってみてください。お尻を通じてサスペンションの動きやタイヤのグリップ感などのインフォメーションが得られ易くなります。ステップ荷重は忘れてください。

シートにどっかり荷重

ネイキッドに限らず、旋回中はシートに全体重を預けるぐらいの気持ちでどっかりと座ってみてください。お尻を通じてサスペンションの動きやタイヤのグリップ感などのインフォメーションが得られ易くなります。ステップ荷重は忘れてください。

 

スタンドを立てた状態で座ったり立ったりを繰り返してみると、リアサスが沈んだり伸びたりするはずです。このように「ステップに立つ=ステップ荷重」はトラクションが抜ける原因にもなります。ただし、スライドしたときには外足荷重が有効です。

必要なときだけステップ荷重

スタンドを立てた状態で座ったり立ったりを繰り返してみると、リアサスが沈んだり伸びたりするはずです。このように「ステップに立つ=ステップ荷重」はトラクションが抜ける原因にもなります。ただし、スライドしたときには外足荷重が有効です。

 

コーナリングフォームの変化(ネイキッドの場合)

ネイキッドでも基本は同じ。ただし、上体がアップライトなポジションのため、前輪荷重を稼ぐためには積極的に頭の位置を前に持っていく必要があります。そのためにはコーナリング中は両腕を畳んで上体を低く伏せるのがコツ。フォームもカッコよく見えます。前回のポイント2のメイン写真を参考にしてみてください。

PAGE01PAGE02PAGE03PAGE04

スマテク講座 講師
佐川 健太郎(Kentaro SAGAWA)
「ライディングアカデミー東京」校長。1963年東京生まれ。モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践的な低速系ライディングから、モータースポーツとしてのサーキットライディングまで、テクニックやノウハウに造詣が深く、メーカー系イベントや各種スクール、走行会などでも講師を務める。米国ケビン・シュワンツ・スクール修了。MFJ公認インストラクター。
-->