キャラを活かせば
もっと楽しくなる
ネイキッド、スーパースポーツ、ツアラーなどバイクにはいろいろなカテゴリーがありますよね。それぞれ目的によってどの性能に重きを置いているのか、デザインを見れば大体予想はできます。
たとえば、ネイキッドは街乗りからツーリング、スポーツライディングまで幅広くこなせる懐の広さが特徴。スーパースポーツならパワーと切れ味鋭いハンドリングが生み出す運動性能が命だし、ツアラーなら大排気量エンジンとソフトなサスペンションが生み出す快適な走りが魅力になっています。
ここまでは皆さんご存じのとおりですが、肝心なのはそれをどう乗りこなすか。「敵を知り己を知らば百戦危うからず」と孫子も伝えていますが、バイクの特性と自分の実力をよく理解して乗れば、ライディングにおける安全性も高まるといったところでしょうか。
私は仕事柄いろいろなバイクに乗ってきましたが、タイプの異なるバイクにたくさん乗れば乗るほど、出力特性やハンドリングなどそのバイクの性格がすぐに分かるようになってきます。人とのつき合いも同じようなもの。人生経験が豊富なほど洞察力に優れ、初対面でも相手の性格を見抜けるのと似ているかもしれませんね。
さらに言えば、造り手の想いまでもがバイクのキャラクターを通じて透けて見えるときがあります。「ツアラーみたいだけど、実は本気でスポーツモデルに挑むつもりなんだ」とか「余分なものはあえて排除して、純粋に走る悦びだけを届けたかったのかな」など、目指した方向性が分かってくると乗っていてより楽しくなるし、バイクへの愛着も湧いてきますね。そんなウンチクを仲間同士で語り合うのも楽しいものです。皆さんもお店の試乗会などには積極的に参加して“バイク経験値”を増やしていくといいと思いますよ。
ともかく、そのバイクのキャラクターや特性が分かると「どう乗りこなせばいいのか」が自ずと見えてきます。排気量や重量、出力特性によってブレーキタイミングやコーナリングラインが変わってくるのは Lesson7 でもお伝えしたとおり。Column #5 ではバイクや速度レンジによるライディングフォームの違いも取り上げました。たとえば大排気量マシンであればトルクを活かした立ち上がり加速重視の走りが楽で安全だし、小排気量マシンなら高いエンジン回転数をキープしたままコーナリング速度重視の走りが向いているといった具合。その逆はあり得ないですよね。
バイクという乗り物を操る基本は同じであっても、それぞれの持ち味をいかに引き出しながら乗ってやるかがカギ。そのためにはバイクをスペックだけで理解するのでなく、あるがままを心と体で感じてほしいと思います。そしていろいろな乗り方をご自身で試してみてください。どこかで聞きかじったテクニックではなく、自分自身で掴み取ったもの。それが本物の生きたスキルだと思うからです。
文/佐川健太郎
| 【ビッグネイキッド】 豪快に乗りこなそう! オーバーリッターの排気量とカウルレスの伝統的なスタイル、大柄な車体を誇示するかのような威風堂々とした走りが身上。デカくて重いがその実、意外にスポーティでワインディングも得意。アップハン&分厚い低速トルクのおかげで渋滞路やUターンも楽々。日本の道を走るために生まれたようなオールラウンダー。排気量を活かした豪快な走りが楽しい。 |
| 【スポーツネイキッド】 繊細なコントロールがキモ! 軽量な車体と元気なエンジン、スタイリッシュなデザインが目を引くスポーツネイキッド。ビッグネイキッドよりスポーティかつスーパースポーツよりも扱い易く使い勝手もいいなど、いいとこ取りなカテゴリー。積極的に乗りこなす走りが楽しいが、エンジン特性やハンドリングが機敏なだけに雑な操作はダメ。ブレーキも繊細なタッチでスムーズに乗りこなしたい。 |
| 【スーパースポーツ】 力を抜いてセルフステア! エンジンレイアウトは直4、直3、V2などバラエティに富むが、どれも高回転型でスロットルを開けたときのピークパワーを重視するタイプ。極端な前傾ポジションとも相まって渋滞路などは「忍」の一文字だが、ワインディングやサーキットでの走りは独壇場。ステアリングダンパー標準装備の車輌も多いが、いかに腕の力を抜いてセルフステアを活かせるかがカギ。 |
| 【メガスポーツ】 立ち上がり重視で! 最高速と運動性能の両立を目指したカテゴリーで、国産だとハヤブサや ZZR などがそう。高速ツーリングが得意な“直線番長”と思われがちだが、実はサーキットなどもけっこういける。ただ、走り方はコーナー前半で車体の向きを変えて、直線的に加速する完全な立ち上がり重視型。前後連動 ABS やパワーモードなどのハイテクを使いこなしたい。 |
| 【デュアルパーパス】 長い足でリズミカルに! コンセプトは冒険ロマン。いかにもオフロードを走りそうなスタイルだが実際にダート走行するつもりなら相当な腕が必要。ツアラーとしての資質に優れ、長い足を活かした快適な乗り心地と、2階建てのような目線の高さが気持ちいい。サスストロークを活かし、スロットルのオン・オフでリズムをとると曲がり易い。たまにはスタンディングで乗りこなしたい。 |
| 【ツアラー】 取り回しスキルを磨くべし! 欧米の広大な土地を「安全に快適に速く」移動するための乗り物として発展してきたカテゴリーだけに、ラグジュアリーカー顔負けの乗り心地と装備の充実が魅力。ハイスピードクルーズはもちろん得意だが、巨体の割にワインディングも意外と軽快。ただし、大柄で重量があるため市街地などでの取りまわしスキルは習得すべし。その上で優雅に乗りこなしたい。 |
| 【クールザー】 米国流をマスターしよう! どこまでも続く平坦なフリーウェイをのんびり流す。アメリカ的な発想でツアラーを作るとこうなる。フォワードステップ&ローシートの独特なライディングポジション、長く寝たフロントフォークとリア寄りの分布荷重など、一般的なバイクとは異なる車体構成のためテクニックもやや特殊。体重移動は尻が中心。ブレーキングはリア主体。浅いバンク角を補うリーンインが有効だ。 |
| 【トレール】 ライテク教材として最適! 250cc 中心の、いわゆるオフロードモデルで使い勝手の良さはナンバーワン。軽量・コンパクトな車体と走破性を活かして買い物から林道ツーリングまで、本当の意味でオールマイティに使える。ウィリーやスライドなど過激テクを安全に学ぶにも最適の教材。ただし、ブロックタイヤの限界は高くないので過信は禁物。コーナリングもほどほどに楽しみたい。 |