掲載日:2010年03月15日 バイク用品インプレッション
タイヤに関しては「グリップが最も重要!」と意気込むスポーツ派ライダーであっても、「日常はツーリングにも使うので極端に短いライフでは…」というのが本音ではないだろうか。
耐摩耗性とグリップ性能は基本的に相反する要素なので、従来のタイヤ製造法ではどこかでその「折り合い」を付ける必要があり、ライダーも重視する性能の取捨選択を迫られることがほとんどだった。しかし、1本のタイヤのトレッド(接地面)を幾つかのゾーンに分割し、それぞれに最適なコンパウンド(ゴム)を配置する製造技術が確立してからはグリップとライフを高い次元で両立したタイヤが続々とデビューしている。
前作のα-11と比較すると、α-12では円周方向のパターンが強調され、よりスポーティな外観となった。7分割トレッドをはじめとするダンロップの最新技術が凝縮されている。
今回ご紹介するダンロップの「SPORTMAX α-12(以下、α-12)」も同様の構造を採用した1本だが、最新作に相応しくその設計思想とスペックは従来の同クラス製品を大きく凌駕するものだ。何と、大排気量車向けZRサイズのリアタイヤのトレッド面は7ゾーンに分割され、それぞれにライフ、ウェット性能、トラクションなどを重視して配合されたコンパウンドを投入。さらに、センターに隣合うゾーンには両サイドのグリップ重視ゾーンへの自然な「繋がり」を重視したシリカ系コンパウンドを、最も外側のショルダー部分には強大なグリップ性能を誇るカーボン系コンパウンドを配置するという念の入れようだ(マルチプルトレッド MT7)。また、タイヤの構造やプロファイルにも最新技術を採用したのはもちろん、バイクを曲げるためのタイヤの基本的な要素「キャンバースラスト」にも最新のテクノロジーを投入。グリップとライフの両立のみならず、ハンドリングや軽快感、ウエット性能までも高い次元で満たしているという。今回は筑波サーキットにて行われたα-12の発表試走会から、その最新インプレッションをお届けしよう。
ダンロップから配布されたα-12の資料で、開発背景とタイトルの入ったページには『若いヤツにはまだ負けない!』『やっぱりバイクはコーナリング!』といったユーザーがターゲットと記されていた。また開発担当者の説明の中には『35-40才のライダー向け』というコメントも。俄然興味が湧いてくるというものである。スーパースポーツ大好きオヤジ向けというのは、これまで聞いたことのないコンセプトだ。さらに、ライフも長くウエットにも強いという説明どおりなら、ホントは寂しいオヤジの財布にも優しく非常に魅力的である。
一方、インプレ当日の筑波サーキットのコンディションは、残念ながらライダーにもタイヤにも優しい環境ではなかった。路面温度は10度、気温は5度だが風もあって体感温度はさらに低い。試乗車は、1,000ccスーパースポーツ系を中心に、600ccスーパースポーツ・ネイキッドまで19台が並ぶ。内2台は比較のため旧モデルにあたるα-11を装着。
冷えたタイヤと路面はご存知の通り要注意。特にハイグリップ系の温度依存度の高いタイヤは、ウオームアップが済むまでに気をつかうべし。体とタイヤが温まるのを待って、ペースを上げてみる。コーナーのアプローチでは、フロントの反応が遅れることも過剰に切れ込むこともなく、その後のラインのトレースもライダーの意思に忠実。前後のグリップのバランスがいいのでコーナーに入ってからのラインの自由度も高い。軽快・シャープというよりは安定成分を強めに感じるが、それは旋回性や応答性が低いということではない。
キャンバースラスト・チューニング・テクノロジーにより、コーナーリング初期の一次旋回ではフロントの旋回力が高い。
コーナーリングの末期近くとなると、リアタイヤ・ショルダーのカーボン系コンパウンドが強大なトラクションを発揮する。
どちらかといえば、適度な粘りによってライダーの安心感を高めているという表現が適当。接地感も十分に感じられ、ライダーへのインフォメーションも明確に伝えてくる。ペースを上げてもしなやかで、ハイグリップタイヤの評価基準としては意味はないかもしれないが、乗り心地もいい。残念ながらリアのスライドを自由にコントロールするようなテクニックは持ち合わせていないので、自分で体感することはできないが、ゲストライダーの中須賀選手や国際ライセンスのレーシング・ライダーの走りを見る限り、またそのコメントからも、流れ始めてからのタイヤのコントロールは良好といえそうだ
最新の素材やマルチプルトレッド(MT)やキャンバースラスト・チューニング・テクノロジー(C.T.T.)といったテクノロジーをこれ見よがしにライダー押し付けることなく、その技術と完成度でオジサンの多少衰えた体力や反射神経を補い多少のミスもカバーしてくれる、「自分が上手くなったように思わせてくれる」懐の深いタイヤである。(バイクブロス・マガジンズ広告部 小椋)
多くのメディアを集めたα-12の発表会では、筑波サーキットの本コースを使用して大々的な試走会も行われた。ダンロップの自信の表れ。
技術説明ではα-12に投入された最新テクノロジーが発表された。MCタイヤのキャンバースラストにまで先進技術を投入している点が興味深い。
発表試走会当日のゲストライダーは全日本ロードレース選手権JSB1000クラスを2連覇した中須賀克行選手。α-12を高く評価している。
試走会に用いられた最新スーパースポーツの多くはタイヤ開発用の実験車両だという。ダンロップの真摯な開発姿勢が窺えるエピソードだ。
メディア関係者が激しく筑波サーキットを攻めた後でもリアタイヤ表面の荒れはこの程度。特にセンター付近の耐摩耗性は高そうだ。
分割トレッドを採用していないフロントのアブレージョン。グリップは強大ながら摩耗は軽度で、こちらのライフも長いことが期待できる。
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