“白バイ流” 究極の安全運転テクニック
取材協力/千葉県警察本部交通機動隊

Lesson3/ブレーキング

掲載日:2010年09月17日 公道スペシャリスト“白バイ流” 究極の安全運転テクニック    

「白バイ流」安全の極意を学ぼう!

常に沈着冷静で威風堂々とした走り。そしてひとたび事件が発生すれば疾風のように現場に駆けつける…。「白バイ」は誰もが認める公道走行のスペシャリスト集団である。その極意とはいかなるものか。2009年度全国白バイ大会のチャンピオン、千葉県警の笹野巡査長を講師に迎え、ストリートを安全確実に走り続けるための考え方やノウハウをお伝えしよう。

Lesson3/ブレーキング
白バイ走法のここがキモだ!
Lesson3/ブレーキング

テクニック以前に
「心のブレーキ」を

ブレーキングといっても常に全力でフルブレーキングしているわけではない。コーナーに入る手前での微妙な速度調整や車体の姿勢をコントロールする意味合いもあるのだ。

 

「走る」「止まる」「曲がる」というバイクの運転要素の中でも特に重視されるべきは「止まる」こと。つまり、減速・停止である。これは白バイ隊員に限らず一般ライダーにとっても同じ。安全に止まることができなければ、コーナリングを楽しむこともできない。まずは確実に止まれる技術を身につけることが先決なのだ。

 

ただし、技術面だけを磨いても片手落ちである。公道には常に事故の危険が潜んでいることを認識すること。そして、危険を予測しながら走ることができて、はじめて本当の安全に一歩近づくのだ。

 

「公道にはどんな危険があるかという話ですが、一番の危険はライダー自身の心の中に潜んでいると思います。バイクやクルマは人間が操っているものです。つまり、事故になるかどうかは運転者の考え方次第なのです。ライダーは常に認知、判断、操作を繰り返しながら運転していますが、そのうちのどれかひとつでもミスをしたとき事故につながる。どこにでも危険は潜んでいると考え、それを自分から見つけるよう心掛けることが大事です」と笹野巡査長。“心のブレーキ”とはよく言ったものだが、まさにそのとおり。危険に対する認識を正しく持つことが、最大の防御につながるということだ。

 

ブレーキングとひと口に言っても、その内容は様々である。事故を回避するために一刻も早く減速し、完全停止に持ち込むために行う急制動もあれば、コーナー手前で曲がれる速度に調整するためのブレーキングもある。いずれにしても、ポイントは前後ブレーキをバランスよく使うこと。基本的に前後ブレーキは同時にかけるが、速度や緊急度によって前後の入力の強さや配分を加減していくことで、制動力を効果的に発揮でき安定して減速することができる。また、白バイにはABS(アンチ・ブレーキロック・システム)が装備されているが、普段はABSを作動させるほど強くはかけない。制動距離が逆に長くなってしまうからだ。ABSはあくまでも緊急用の装備と心得よう。

 

そして忘れてはならないのがライディングフォーム。ニーグリップを中心に下半身全体でバイクを押さえ込むことで、減速時にかかる腕への負担を少なくし、ハンドルの動きを極力抑えないようにする(詳しくはlesson1「乗車姿勢」を参考)。ブレーキングは地味だが安全運転には欠かせない重要テクニック。ぜひ基本から積み上げていってほしい。

前後ブレーキをバランスよく使い、車体の安定を保ったまま減速。ヒザと太腿でタンク後端をしっかり挟み込んで上半身を支え、ブレーキングで着座位置が前にずれないようにする。

前後ブレーキを使う

前後ブレーキをバランスよく使い、車体の安定を保ったまま減速。ヒザと太腿でタンク後端をしっかり挟み込んで上半身を支え、ブレーキングで着座位置が前にずれないようにする。

最新の白バイはABSを装備している。急制動などで前または後ブレーキがロックした場合、瞬間的かつ断続的に制動力を解除して安全に止まれる仕組みだ。訓練でも通常はABSを作動させない。

ABSは緊急時に効果大

最新の白バイはABSを装備している。急制動などで前または後ブレーキがロックした場合、瞬間的かつ断続的に制動力を解除して安全に止まれる仕組みだ。訓練でも通常はABSを作動させない。

ブレーキ性能が向上した現代のバイクではブレーキレバーの操作は2本がけでも十分な制動力が得られる。指をグリップに残したほうが路面のギャップに弾かれたときなども安心だ。

2本がけでも十分

ブレーキ性能が向上した現代のバイクではブレーキレバーの操作は2本がけでも十分な制動力が得られる。指をグリップに残したほうが路面のギャップに弾かれたときなども安心だ。

3本がけはレバーの先端近くを握れるため、より強い力で操作できるメリットがある。笹野巡査長も2本と3本を使い分けている。レバーが遠い場合は使いやすい位置に調整しよう。

3本がけも使い分ける

3本がけはレバーの先端近くを握れるため、より強い力で操作できるメリットがある。笹野巡査長も2本と3本を使い分けている。レバーが遠い場合は使いやすい位置に調整しよう。

リヤブレーキも積極的に使っていこう。ペダル位置で操作感が変わるため位置調整はシビアに。ステップバーに土踏まずを置いたとき足首が直角になる位置にペダルがくれば適切だ。

足首が直角になる位置に

リヤブレーキも積極的に使っていこう。ペダル位置で操作感が変わるため位置調整はシビアに。ステップバーに土踏まずを置いたとき足首が直角になる位置にペダルがくれば適切だ。

ブレーキペダルの操作は「親指の付け根」あたりで踏むようにすると微妙なタッチが分かりやすい。誤操作防止のためにも爪先はしっかり進行方向へ向けておくようにしたい。

親指の付け根で踏む

ブレーキペダルの操作は「親指の付け根」あたりで踏むようにすると微妙なタッチが分かりやすい。誤操作防止のためにも爪先はしっかり進行方向へ向けておくようにしたい。

タイトコーナーへの進入場面。すでに車体は傾いているがブレーキレバーはまだかなり強く握りながら旋回動作へと移行している。熟練の白バイ隊員だからできるテクニックだ。

コーナー進入での減速

タイトコーナーへの進入場面。すでに車体は傾いているがブレーキレバーはまだかなり強く握りながら旋回動作へと移行している。熟練の白バイ隊員だからできるテクニックだ。

中速コーナーを旋回中の場面だが、コーナー中盤でも必要ならば前後ブレーキを引き摺るように軽くかけて旋回速度を調整する場合もある。強くかけすぎるとスリップして危険。

コーナリング中の速度調整

中速コーナーを旋回中の場面だが、コーナー中盤でも必要ならば前後ブレーキを引き摺るように軽くかけて旋回速度を調整する場合もある。強くかけすぎるとスリップして危険。

取材協力
取材にご協力いただいたのは千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係の皆様。2009年は「全国白バイ安全運転競技大会」団体一部で総合優勝を獲得するなど、全国白バイ隊員の中でも強豪チームとして知られる。
講師 プロフィール
講師 笹野裕也巡査長
千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係所属。「第41回全国白バイ安全運転競技大会」において個人総合優勝、千葉県警を団体一部優勝に導いた。マラソンを先導している白バイの凛々しい姿に憧れて現職を志す。プライベートではツーリングを楽しむ根っからのバイク好きでもある。愛車はCB1300SF。千葉県出身。
解説者 プロフィール
解説 佐川健太郎
モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践テクからサーキット走行まで造詣が深く、白バイ関連の記事や映像も数多く手掛けるなど白バイテクについても精通。本誌ライテク講座「"スマテク"で乗りこなそう!」でも講師を担当した。ライディングアカデミー東京校長。MFJ公認インストラクター。

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