“白バイ流” 究極の安全運転テクニック
取材協力/千葉県警察本部交通機動隊

Lesson4/女性隊員

掲載日:2010年10月01日 公道スペシャリスト“白バイ流” 究極の安全運転テクニック    

「白バイ流」安全の極意を学ぼう!

常に沈着冷静で威風堂々とした走り。そしてひとたび事件が発生すれば疾風のように現場に駆けつける…。「白バイ」は誰もが認める公道走行のスペシャリスト集団である。その極意とはいかなるものか。2009年度全国白バイ大会のチャンピオン、千葉県警の笹野巡査長を講師に迎え、ストリートを安全確実に走り続けるための考え方やノウハウをお伝えしよう。

Lesson4/女性隊員編
白バイ走法のここがキモだ!
Lesson4/女性隊員編

女性ならではの創意工夫で
華麗に乗りこなしたい

最近では大型バイクに乗る女性ライダーも数多く見かけるようになった。ただ、男性に比べると体格・体力面ではハンデが多いことも事実。そこで今回は、女性ライダーが大型バイクを安全かつ快適に乗りこなすためのポイントを解説しよう。講師は千葉県警交通機動隊が誇る女性白バイ隊員チーム「ホワイトレディース」の村島早紀さんと原田千歩さん。

 

流れるように滑らかでしかもメリハリのある女性白バイ隊員の走りを見ていると、ライディングに体力や体格は関係ないのだとあらためて思い知らされる。実際のところ、全国の精鋭が集まる白バイ競技大会などでも、女性隊員のトップクラスは男性隊員とほとんど変わらないタイムで難しいスラロームコースを走り切ってしまう。そのライディングには、いったいどんな秘訣があるのだろうか。

 

「たしかに女性は男性に比べて腕力もなく体も小さいですから、力まかせの乗り方をしていては到底上手く乗りこなせません。やはり大事なのは、丁寧な操作やバイクの動きに逆らわないことではないでしようか。流れというか、うまくリズムに乗ることがスムーズに乗りこなすコツだと思います」と村島さん。力の抜けた優雅なライディングスタイルだが、大きな白バイが実にダイナミックな動きをする。ややもすると気合いが入りすぎる男性に比べ、スロットルやブレーキなどひとつひとつの操作が柔らかくムダがないのが特徴だ。

 

「ムリをしないことも大事ですね。特に大型バイクは倒してしまうと独りではなかなか起こせません。Uターンなども最初からバイクを降りて取り回すとか、駐車するときも楽に発進できる場所を選んで止めるなどの工夫が必要だと思います」と語るのは原田さん。もちろん、女性隊員はひとりでバイクの引き起こしもできるスキルを持っているが、最初からリスクを極力減らすのは基本である。

 

特に体格面で不利になる取り回しだが、ちょっとした工夫でだいぶ楽になるという。たとえば、乗車するときは最初にハンドルを右に切っておけばブレーキレバーも近くなるし、逆に左のグリップは車体から離れるのでテコの応用によって少ない力でバイクを起こすことができる。サイドスタンドを払ってから乗り込むのは男性でも躊躇するものだが、女性の場合、体格によっては跨ってからではスタンドが払えない場合がある。シートに右手をついて後ろ向きに押すのも女性には困難な場合があるが、バランスさえ取れれば実は最も少ない労力でバックする方法なのだ。目からウロコの裏技のようだが、女性隊員たちは絶え間ない練習と創意工夫によって実践的なスキルを身につけているのだ。こうしたスキルは男性ライダーにもそのまま役立つことばかりなのでぜひ参考にしてもらいたい。

パワフルで重量もある白バイを力まかせに扱っても上手くいかない。肩や腕、上体の力を抜いてバイクの動きにライダーが合わせるようにするのが上手く操るコツ。走りは村島さん。

バイクの動きを邪魔しない

パワフルで重量もある白バイを力まかせに扱っても上手くいかない。肩や腕、上体の力を抜いてバイクの動きにライダーが合わせるようにするのが上手く操るコツ。走りは村島さん。

スムーズなライディングを心掛けることは基本だが、バイクの運動性を引き出すには大胆なフォーム、ダイナミックな体の動きも必要になる。走りは原田さん。

体の動きはダイナミックに

スムーズなライディングを心掛けることは基本だが、バイクの運動性を引き出すには大胆なフォーム、ダイナミックな体の動きも必要になる。走りは原田さん。

小柄な女性隊員であって基本的な乗車姿勢は変わらない。着座位置はタンクとの間に少し隙間を空けて、ハンドルに伸ばす両腕は肘を軽く曲げて余裕を持たせる。

乗車姿勢は基本どおり

小柄な女性隊員であって基本的な乗車姿勢は変わらない。着座位置はタンクとの間に少し隙間を空けて、ハンドルに伸ばす両腕は肘を軽く曲げて余裕を持たせる。

乗車時はまずハンドルを右いっぱいに切ってからバイクを起こし、サイドスタンドを左足で払う。ハンドルを右に切ると左手に力を入れやすく車体も安定する。

ハンドルを右に切って乗車

乗車時はまずハンドルを右いっぱいに切ってからバイクを起こし、サイドスタンドを左足で払う。ハンドルを右に切ると左手に力を入れやすく車体も安定する。

左手はグリップエンドを握ることでさらに力を入れやすくなる。女性ならではの工夫だ。後方の安全を確認しながらサイドスタンドを払った状態でヒザを曲げて乗り込む。

グリップエンドを持つ

左手はグリップエンドを握ることでさらに力を入れやすくなる。女性ならではの工夫だ。後方の安全を確認しながらサイドスタンドを払った状態でヒザを曲げて乗り込む。

取り回しでは体をバイクに寄せるのが基本。腰あるいは脇腹あたりをシートやタンク後端に当ててバイクとの一体感を高めると安定する。ここでも右手の持ち方に注目。

体をバイクに寄せる

取り回しでは体をバイクに寄せるのが基本。腰あるいは脇腹あたりをシートやタンク後端に当ててバイクとの一体感を高めると安定する。ここでも右手の持ち方に注目。

車体はなるべく直立状態にしたほうが取り回しも軽くなる。これは右回りの場合だが、慣れていないと反対側に倒しそうになるため注意。その場合は腰で支えてもいい。

車体を立てて押す

車体はなるべく直立状態にしたほうが取り回しも軽くなる。これは右回りの場合だが、慣れていないと反対側に倒しそうになるため注意。その場合は腰で支えてもいい。

体力・体格面でハンデのある女性でも技術を身につければ、このように体をバイクから離して後進することもできる。上体とともに足先を進行方向に向けると押しやすい。

足先を押す方向に向ける

体力・体格面でハンデのある女性でも技術を身につければ、このように体をバイクから離して後進することもできる。上体とともに足先を進行方向に向けると押しやすい。

取材協力
取材にご協力いただいたのは千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係の皆様。2009年は「全国白バイ安全運転競技大会」団体一部で総合優勝を獲得するなど、全国白バイ隊員の中でも強豪チームとして知られる。
講師 プロフィール
講師 笹野裕也巡査長
千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係所属。「第41回全国白バイ安全運転競技大会」において個人総合優勝、千葉県警を団体一部優勝に導いた。マラソンを先導している白バイの凛々しい姿に憧れて現職を志す。プライベートではツーリングを楽しむ根っからのバイク好きでもある。愛車はCB1300SF。千葉県出身。
解説者 プロフィール
解説 佐川健太郎
モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践テクからサーキット走行まで造詣が深く、白バイ関連の記事や映像も数多く手掛けるなど白バイテクについても精通。本誌ライテク講座「"スマテク"で乗りこなそう!」でも講師を担当した。ライディングアカデミー東京校長。MFJ公認インストラクター。

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