“白バイ流” 究極の安全運転テクニック
取材協力/千葉県警察本部交通機動隊

Lesson9/コーナリング

掲載日:2010年12月17日 公道スペシャリスト“白バイ流” 究極の安全運転テクニック    

「白バイ流」安全の極意を学ぼう!

常に沈着冷静で威風堂々とした走り。そしてひとたび事件が発生すれば疾風のように現場に駆けつける…。「白バイ」は誰もが認める公道走行のスペシャリスト集団である。その極意とはいかなるものか。2009年度全国白バイ大会のチャンピオン、千葉県警の笹野巡査長を講師に迎え、ストリートを安全確実に走り続けるための考え方やノウハウをお伝えしよう。

Lesson9/コーナリング
白バイ走法のここがキモだ!
Lesson9/コーナリング

浅めのバンク角で
効率的に曲がる

白バイのコーナリングでは、リーンイン気味に上体をややコーナーのイン側に入れた独特のフォームが特徴的だ。これは浅いバンク角で効率的に曲がるため。上体をイン側に入れることでライダーの重心もイン側に移動して曲がりやすい状態を作り出すことができ、その分バイクは起こしていける。つまり安全で効率的な曲がり方なのだ。

 

バイクが曲がるためにはその特性上、車体を傾ける必要がある。これは遠心力に打ち勝つためであり、速度が高まるほどその傾斜角、いわゆるバンク角も深まっていく傾向がある。ただし、バンク角には限度があり、ただ深く傾ければいいというものではないし、バンク角が深まるにつれ転倒などのリスクも当然高くなる。それは白バイとて同じだが、日常業務の中で自分の身を守りながら常に安全運転の模範となるべき隊員たちにとって、転倒のリスクは絶対に避けなければならないものだ。これは我々一般ライダーにとっても同じことだろう。

 

「白バイに限らずですが、バイクやクルマを運転する上で最も大事なことは"安全に"ということです。常に安全確認をしっかり行い、速度を抑えて走ることは当然ですが、同時になるべく安全マージンの高い走り方を工夫することも大事です。コーナリングにおいては、"必要以上に車体を傾け過ぎない"こともそのひとつ。特に我々、白バイの場合、季節や天候、路面状況を選ぶことはできませんから、いつでも確実にコンスタントな走りができるようにしなくてはなりません。これは皆さんも同じだと思います」と笹野巡査長。最近はバイクやタイヤの性能も上がり、バイク任せにスピードやバンク角を求めるライダーも目につくが、これはとても危険なこと。バイクが高性能になってもそれを操るのはライダー自身であり、自分の技術を過信して限度を超えてしまうことが事故へとつながっているのだ。

 

白バイのコーナリングでは車体をあまり傾けず、その分上体をイン側に入れることで旋回力とのバランスを取るフォームが定番となっている。これは笹野巡査長が言うとおり、安全に曲がるためだ。特に雨天などグリップが低い路面では浅めのバンク角のまま、ステアリング舵角を大きめにとった走り方のほうが安全マージンも高い。加えて、白バイ大会ではステップやバンパーなどが路面に接地すると減点となるため、こうした白バイ独特のフォームが出来上がったのだ。カタチだけを真似するのではなく、もっと深いところにあるその理由について考えてもらえたら幸いだ。

コーナーが近づいてきたら前後ブレーキをバランスよく使ってバイクの姿勢をコントロールしつつ確実に減速する。両腕は突っ張らず、ニーグリップで車体をホールド。

コーナー手前で確実に減速

コーナーが近づいてきたら前後ブレーキをバランスよく使ってバイクの姿勢をコントロールしつつ確実に減速する。両腕は突っ張らず、ニーグリップで車体をホールド。

フロントブレーキはあまり引き摺らずスムーズに体重移動によって車体を傾けていく。倒し込み自体は非常に俊敏で、コーナーの入り口ですでに最大バンク角に達している。

スムーズに倒し込み

フロントブレーキはあまり引き摺らずスムーズに体重移動によって車体を傾けていく。倒し込み自体は非常に俊敏で、コーナーの入り口ですでに最大バンク角に達している。

ここからが白バイの真骨頂。バンク角は測ったように一定のまま、きれいに円旋回の軌道を描く。スロットルは一定のまま上体の入れ具合によって旋回力をコントロール。目線は先に。

バンク角一定のまま旋回

ここからが白バイの真骨頂。バンク角は測ったように一定のまま、きれいに円旋回の軌道を描く。スロットルは一定のまま上体の入れ具合によって旋回力をコントロール。目線は先に。

コーナー出口が近づいたらスロットルを滑らかなに開けて加速しながら上体をやや前傾。体重はシートに預けるイメージ。どっしりとした安定感が写真からも見てとれるはずだ。

シートに荷重しつつ加速

コーナー出口が近づいたらスロットルを滑らかなに開けて加速しながら上体をやや前傾。体重はシートに預けるイメージ。どっしりとした安定感が写真からも見てとれるはずだ。

下半身でしっかり車体をホールドしつつ上体はリラックスして、体の面を曲がりたい方向に向けていくイメージ。上体はイン側に入るためシートのイン側に自然と体重もかかってくる。

上体を曲がる方向に向ける

下半身でしっかり車体をホールドしつつ上体はリラックスして、体の面を曲がりたい方向に向けていくイメージ。上体はイン側に入るためシートのイン側に自然と体重もかかってくる。

旋回速度や車体の安定性をリアブレーキでコントロール。ブレーキ踏み込みの強さでバンクセンサーより先に爪先が路面に接触するが、隊員たちはそれもセンサーとしているのだ。

バンク時は爪先もセンサー

旋回速度や車体の安定性をリアブレーキでコントロール。ブレーキ踏み込みの強さでバンクセンサーより先に爪先が路面に接触するが、隊員たちはそれもセンサーとしているのだ。

倒し込みのキッカケ作りは、ほとんどが上体をイン側に入れることによる体重移動で行っている。笹野さんの場合、イン側ステップの踏み込み、逆操舵は意識していないという。

キッカケ作りは体重移動

倒し込みのキッカケ作りは、ほとんどが上体をイン側に入れることによる体重移動で行っている。笹野さんの場合、イン側ステップの踏み込み、逆操舵は意識していないという。

コーナリング時に大事なのが外足。ヒザと太腿をタンクにしっかり当てることで、パンク角を安定させつつバイクとの一体感を高めることができる。ステップには土踏まずを乗せる。

外足ホールドが大事

コーナリング時に大事なのが外足。ヒザと太腿をタンクにしっかり当てることで、パンク角を安定させつつバイクとの一体感を高めることができる。ステップには土踏まずを乗せる。

取材協力
取材にご協力いただいたのは千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係の皆様。2009年は「全国白バイ安全運転競技大会」団体一部で総合優勝を獲得するなど、全国白バイ隊員の中でも強豪チームとして知られる。
講師 プロフィール
講師 笹野裕也巡査長
千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係所属。「第41回全国白バイ安全運転競技大会」において個人総合優勝、千葉県警を団体一部優勝に導いた。マラソンを先導している白バイの凛々しい姿に憧れて現職を志す。プライベートではツーリングを楽しむ根っからのバイク好きでもある。愛車はCB1300SF。千葉県出身。
解説者 プロフィール
解説 佐川健太郎
モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践テクからサーキット走行まで造詣が深く、白バイ関連の記事や映像も数多く手掛けるなど白バイテクについても精通。本誌ライテク講座「"スマテク"で乗りこなそう!」でも講師を担当した。ライディングアカデミー東京校長。MFJ公認インストラクター。

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