“白バイ流” 究極の安全運転テクニック
取材協力/千葉県警察本部交通機動隊

Lesson11/オフセットターン

掲載日:2011年01月28日 公道スペシャリスト“白バイ流” 究極の安全運転テクニック    

「白バイ流」安全の極意を学ぼう!

常に沈着冷静で威風堂々とした走り。そしてひとたび事件が発生すれば疾風のように現場に駆けつける…。「白バイ」は誰もが認める公道走行のスペシャリスト集団である。その極意とはいかなるものか。2009年度全国白バイ大会のチャンピオン、千葉県警の笹野巡査長を講師に迎え、ストリートを安全確実に走り続けるための考え方やノウハウをお伝えしよう。

Lesson11/オフセットターン
白バイ走法のここがキモだ!
Lesson11/オフセットターン

外から入って
小さく出る

白バイのターンはステアリング舵角とバンク角を併用した高度な技術の上に成り立っている。低速ではハンドルを切って曲がるのが基本だが、ある程度の速度になると遠心力に対抗するために車体を寝かし込んでいく必要がある。スムーズに曲がるためには、微妙なスロットルワークとリヤブレーキによるパワー制御も必要だ。

 

白バイ大会の花形種目といえばスラロームである。スラロームとは主にパイロンを設置して作られたコース上をいかにミスなく安全・確実に走り切るかを競うタイムトライアル競技のこと。コースの中には以前解説した直線パイロンやS字、クランクなどもあり、レイアウトは毎年変わるため競技は一発勝負になるなど非常に難易度が高いのが特徴だ。転倒はもちろん、パイロンタッチやステップ等の接地は大幅減点になるため、速いだけでは評価されない。白バイの任務を想定した、プレッシャー下における冷静な走りが求められるのだ。

 

「白バイに限らず、クルマやバイクを運転しているときは周囲の環境に十分目を配る必要があります。タイムを計測するスラローム競技であってもそれは同じこと。パイロンに触れることは、公道でいえば人や他のクルマなどに接触したと見なされます。むしろ急いでいるときほど注意散漫になりがちなので、意識してペースを落とし、冷静な運転を心掛けてください」と笹野さん。白バイのスラローム競技では、バイクを操る技術だけでなくステップと路面との距離や、バンパーとパイロンとの間合いなど車両感覚も同時に求められるのだ。

 

さて、そのスラロームの中でも代表的なスキルがオフセットパイロンスラロームである。これはジグザグに置かれたパイロンを左右交互に切り返していくセクションで、スロットルと前後ブレーキ、体重移動を正確かつタイミングよく組み立てていくことがポイントになる。フォームはリーンウィズを基本にターンの大きさによって多少変化させても構わない。つまり、コンパクトに曲がりたいときはリーンアウトに、より大きなコーナーになればリーンインに近くなる。もうひとつ大事なのはライン取りで、「外から入って小さく出る」のが基本。これにより減速しながらスムーズに進入しつつ、立ち上がりでは車体を起こしてコンパクトなラインで直線的に立ち上がることができる。つまり安全に素早く加速体勢に持っていけるわけだ。一連の流れの中で正確な操作とラインが描けるように、少しずつトライしてみてほしい。

パイロン手前では前後ブレーキでしっかり減速。ただし、急減速ではなく車体を倒し込みながらスムーズに速度をコントロールしつつ、パイロンの外側からアプローチする。

倒し込みつつ滑らかに減速

パイロン手前では前後ブレーキでしっかり減速。ただし、急減速ではなく車体を倒し込みながらスムーズに速度をコントロールしつつ、パイロンの外側からアプローチする。

ターンの後半ではパイロンに近づきつつ、ハンドルを若干切り増すことで車体を起こしながら立ち上がりの準備。リヤブレーキは踏んだままスロットルは開け始める。

ハンドルを切って車体を起こす

ターンの後半ではパイロンに近づきつつ、ハンドルを若干切り増すことで車体を起こしながら立ち上がりの準備。リヤブレーキは踏んだままスロットルは開け始める。

短い直線でも上体を伏せてしっかり加速。加速することで後輪にトラクションがかかってバイクも安定する。スラロームでは通常、クラッチは使わない。目線は次のパイロンへ。

直線はしっかり加速

短い直線でも上体を伏せてしっかり加速。加速することで後輪にトラクションがかかってバイクも安定する。スラロームでは通常、クラッチは使わない。目線は次のパイロンへ。

スロットルを閉じつつ次のパイロンに向けてアプローチ。上体をイン側に移動させつつ、外ヒザでタンクを押し込んで倒し込みのキッカケを作っている。ここではハンドルはフリー。

上体と外ヒザで倒し込み

スロットルを閉じつつ次のパイロンに向けてアプローチ。上体をイン側に移動させつつ、外ヒザでタンクを押し込んで倒し込みのキッカケを作っている。ここではハンドルはフリー。

パイロン間の短い直線でもスロットルは全開。ただしターン直後の立ち上がりでは後輪が滑り出す危険があるため、同時にリヤブレーキでパワーを抑えていることが多い。

一瞬でもスロットルは全開

パイロン間の短い直線でもスロットルは全開。ただしターン直後の立ち上がりでは後輪が滑り出す危険があるため、同時にリヤブレーキでパワーを抑えていることが多い。

左ターンを外側から見たところ。フロントブレーキは車体が寝て、かなり曲がり込むまでかけている。上体は大きくイン側に入っているため、外腕はほぼ伸び切った状態だ。

かなり奥までフロントも使う

左ターンを外側から見たところ。フロントブレーキは車体が寝て、かなり曲がり込むまでかけている。上体は大きくイン側に入っているため、外腕はほぼ伸び切った状態だ。

右ターンを外側から見たところ。左ステップには足先を真っ直ぐにして土踏まずを乗せている。爪先は常にペダルの上にあるが、爪先を上げてペダルに接触させていないのがポイント。

爪先はまっすぐ前に

右ターンを外側から見たところ。左ステップには足先を真っ直ぐにして土踏まずを乗せている。爪先は常にペダルの上にあるが、爪先を上げてペダルに接触させていないのがポイント。

ハンドルを切って曲がる低速系では、前輪と後輪の軌跡の違いから生まれる内輪差を計算したライン取りが必要。フロントは大外を回っていてもリヤバンパーは接触しそうになる。

内輪差を計算したラインを

ハンドルを切って曲がる低速系では、前輪と後輪の軌跡の違いから生まれる内輪差を計算したライン取りが必要。フロントは大外を回っていてもリヤバンパーは接触しそうになる。

取材協力
取材にご協力いただいたのは千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係の皆様。2009年は「全国白バイ安全運転競技大会」団体一部で総合優勝を獲得するなど、全国白バイ隊員の中でも強豪チームとして知られる。
講師 プロフィール
講師 笹野裕也巡査長
千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係所属。「第41回全国白バイ安全運転競技大会」において個人総合優勝、千葉県警を団体一部優勝に導いた。マラソンを先導している白バイの凛々しい姿に憧れて現職を志す。プライベートではツーリングを楽しむ根っからのバイク好きでもある。愛車はCB1300SF。千葉県出身。
解説者 プロフィール
解説 佐川健太郎
モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践テクからサーキット走行まで造詣が深く、白バイ関連の記事や映像も数多く手掛けるなど白バイテクについても精通。本誌ライテク講座「"スマテク"で乗りこなそう!」でも講師を担当した。ライディングアカデミー東京校長。MFJ公認インストラクター。

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