大排気量ほど
豪快かつ難しい
排気量が大きいということは、それだけ一度にたくさんのガソリンを燃やして大きなエネルギーを取り出せるということ。エンジン性能的には大きなトルクを発生できることになります。トルクとは軸馬力のこと。簡単にいうと、後輪を駆動させる力のことです。
一方「パワー=仕事率」なので、小さな排気量でも高回転まで回すことでハイパワーが得られます。たとえば、ひとつのピストンが小さく高回転化させ易いマルチエンジンなどは、同じ排気量のシングルエンジンよりもパワー的に有利なのは皆さんご存じのとおりです。
大型バイクの魅力はその排気量の大きさを活かした豪快な乗り味にあると言えるでしょう。高速クルーズでの余裕しゃくしゃくな走りや、スロットルを開けたときの怒涛の加速はまさに大排気量マシンの真骨頂です。
その一方で、排気量が大きくなるほど一般的に扱いが難しくなっていきます。余りある大トルクはラフなスロットル操作でいとも簡単に後輪をスライドさせてしまいますし、車体が大きく、重くなればそれだけ減速しにくくなります。コーナリングにおいては、重いマシンほど遠心力も強く働くため、旋回速度を高めるのが難しくなっていきます。
ただ、大排気量マシンの場合、そのエンジン性能を引き出すための工夫も凝らされています。それは加速時のスライドを制御するトラクション・コントロールや、ブレーキロックを防ぐためのABSなどです。また、大排気量マシンにはコーナリング中の高荷重にも耐えられる、高性能タイプのサスペンションやタイヤが装備されているのが普通です。
これらのメリットとデメリットを理解した上で、そのマシンの特性を引き出すことが、大排気量マシンを巧く操るポイントです。次回からはそのあたりを加速、減速、旋回などのシチュエーション別に詳しく見ていくことにしましょう。 |
| スロットル操作は繊細に コーナーの立ち上がりは最もデリケートなスロットル操作が求められるシーン。メガスポーツの大トルクはいとも簡単に後輪をスライドさせてしまいます。トラクション・コントロールが付いていても油断は禁物。 ブレーキングで差が出る 一般的に排気量が大きくなるほど車重も重くなる傾向があります。慣性力も強く働くため、それを減速させるためにより強力なブレーキシステムが必要。ただし、制動距離はライダーの操作スキルによって大きく左右します。 |
軽さ小ささの安心感 ホンダ XR230は、街乗りから林道ツーリングまで楽しめるデュアルパーパスモデル。跨ってみると、その軽さ・細さ・小ささを実感し、安心感を覚えます。ホイールベース(1,340mm)はK1300Sよりも250mmほど短く、車重122kg、最高出力18psです。右の2台と比較してみてください。 |
| まさにジャストサイズ トライアンフ ストリート・トリプルRは、いわゆるミドルクラスのスポーツネイキッド。3気筒ならではのスリムさで排気量の割にコンパクトな車体であることが分かります。ホイールベースはXRとさほど変わらず、車重(167kg)は約1.4倍、パワー(108ps)はちょうど6倍です。 | 大排気量ならではの余裕 BMW K1300Sは、大排気量が生み出す余裕のクルーズ性能から、その気になればアグレッシブな走りもできる、いわゆるメガスポーツの代表格。ホイールベースはXRの1.2倍、車重(254kg)は約2倍、パワー(175ps)は約10倍にも達します。見てのとおり、その大きさは圧倒的です。 |
際立つ直進安定性 発進からわずか2.8秒で100km/hまで達する凄まじい加速力は、まさに地上を走るロケットのよう。その猛ダッシュの中、流れる景色を楽しめる余裕が持てるところがBMWたる所以。デュオレバーのガッチリとした剛性感に裏打ちされた直進安定性の高さはK1300シリーズならではですね。 |
| 軽快なトルク走りが魅力 どこからでも加速する、ワイドで力強い中速トルクが3気筒エンジンの特長。小回りの利く軽量・コンパクトな車体と相まって、タイトコーナーでストップ&ゴーを繰り返すスラロームなどは得意中の得意。ハンドリングは排気量だけでなく、エンジンのキャラクターが大きな意味を持つことが分かります。 |