今日から使えるライテク実践講座-「サーキット走行のスポ・テクとは?」

Text / Kentaro SAGAWA Photo / Satoshi MAYUMI  取材協力 /ライディングアカデミー東京  撮影協力 / トミンモーターランド
ライディングアカデミー東京」佐川健太郎の“スマテク”とは?
普段から役立つ実践的なノウハウや方法をレクチャーしてくれるのは、バイクライフをもっと豊かにするためのライディングスクール「ライディングアカデミー東京」の佐川健太郎校長。せっかく手元にある大型バイク、安全に走りを楽しみ、満面の笑みで1日を終えたいもの。そのためには、ライダー自身のスキルアップと安全意識の向上、環境へも配慮したスマートなライディングを目指したい。それが“スマートテク”なのだ。
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コーナーに合った
最適なギヤを選ぼう!

今回からサーキット・ライディングの後半。まずはシフトワークから習得していきましょう!

 

さて、ギアチェンジは何のために行うのでしょうか。速度を調整するため? はたまたエンジン回転数を変えるためでしょうか…。どちらもちょっと違いますね。ギアチェンジの本当の目的は、そのコーナーに合った「最適なギアを選択する」ことにあります。

 

たとえば80㎞/hで旋回できるコーナーがあったとします。そこを何速ギアで走ればちょうど良いでしょうか。もし1速で走れば、レッドゾーン近くまでエンジン回転数が上がってギクシャクしてしまうでしょうし、逆に6速で走ったら、回転数が低くなり過ぎて加速出来ないし、接地感も得られず不安定になるはずです。

 

エンジンにはそれぞれレスポンス=応答性の良い回転数というものがあります。スロットルを開けると即座に加速してくれる回転域であり、これを「パワーバンド」と呼んだりします。パワーバンドはエンジンが最も効率的に仕事をしてくれる回転域ですから、なるべくそのゾーンをキープしたまま走行出来るのが理想です。

 

ただし、パワーバンドはレスポンスが良すぎて、スロットルワークがシビアになりがち。特にコーナリング中はその下の回転域を使って、立ち上がりでうまくパワーバンドに乗せる走り方のほうが現実的でしょう。

 

まずは正確なシフトワークを覚えて、滑らかな走りを目指しましょう!

フル加速からのシフトワーク
直線加速では速度に合わせてシフトアップしていきますが、サーキットではクラッチを使わずにギアチェンジする方法を知っておくと有利です。これは駆動系に生じるわずかなアソビを利用するもので、スロットルを閉じると同時にクラッチレバーを引かずにシフトペダルを掻き上げます。タイミングが大事で、スロットルに対してペダル操作が遅れるとうまくギアが入りません。ライディングフォームは上体を伏せたまま全開加速中に行うため、冷静さと正確さが求められます。

 

加速時はノンクラッチシフトアップ

直線加速では速度に合わせてシフトアップしていきますが、サーキットではクラッチを使わずにギアチェンジする方法を知っておくと有利です。これは駆動系に生じるわずかなアソビを利用するもので、スロットルを閉じると同時にクラッチレバーを引かずにシフトペダルを掻き上げます。タイミングが大事で、スロットルに対してペダル操作が遅れるとうまくギアが入りません。ライディングフォームは上体を伏せたまま全開加速中に行うため、冷静さと正確さが求められます。

手首のスナップで戻す

ノンクラッチシフトアップでは素早いスロットルオフで駆動系に一瞬のアソビを作り出します。コツは手首のスナップを利かせること。そのためには、グリップはごく軽く、さっくりと握ることが大事。リターンスプリングのバネの力に頼っていては間に合いません。指は1本ブレーキレバーに当てていますが、引いてはいません。

 

確実に押し上げる

シフト操作では単にペダルを上下させるのではなく「確実に入れる」意識を持ちましょう。足先でちょんと触れるだけでは滑ったりしてシフトミスの原因に。シフトパッドにしっかり当てて、足首の力で確実にペダルを押し上げるようにしましよう。最初から軽くパッドに当てておくと、より少ないストロークで簡単に入ります。

 

減速時はブリッピングシフトダウン

減速時は前後ブレーキをかけながらシフトダウンも同時に行う必要があります。低いギアにシフトしていくためエンジン回転数にギャップが生じますが、それをうまく調整するために行うのが「ブリッピングシフトダウン」です。基本的には、クラッチを切ると同時にスロットルを煽ってエンジン回転数を上昇させ、その隙にシフトペダルを踏み下げてシフトダウンを行います。ブレーキレバーを引きながらスロットル操作も同時に行うため難易度は高く、熟練を要するテクニック。レバーの位置調整もシビアに行いましょう。

レバー操作量を一定に

慣れないと、ブリッピング(スロットルを煽る)するときにブレーキレバーまで引いてしまいがち。レバー操作量は一定とし、スロットル操作と独立させるのがキモ。スロットルを開けるというよりは「グリップに掌を当てていく」イメージ持つと、より繊細な操作がし易いはず。煽りの量は少しでOKです。

 

クラッチは全部切らない

ブリッピングするときクラッチを切りますが、思い切り最後までレバーを引く必要はありません。駆動力が一瞬抜ければ良いだけなので、車種にもよりますが半クラの終わりぐらいまで、1~2cm程度引けば十分なはずです。切りすぎは逆につなぐときタイミングがずれてギクシャクし易くなります。

 

確実に押し下げる

シフトアップと同じで、ペダル操作は確実に、正確に行えるよう意識しましょう。足首をピボットにして、親指の付け根あたりでペダルをじんわり踏み込むイメージです。力まかせにガツガツ蹴り下げる人がいますが、ペダルやシフト機構を傷める原因になります。自分が操作し易い位置にペダルを調整することも大事です。

図はどのタイミングでシフトアップすべきかを表したもの。たとえば、コーナーを1速で立ち上がって、長い直線をフル加速しながら5速までシフトアップしていく場合です。シフトポイントは各ギアともエンジンが最大効率を発揮する回転数が基本となります。つまりパワーバンドです。パワーバンドとは概ね、最大トルク発生回転数から最高出力発生回転数までの間ぐらいです。パワーバンドは小排気量ほど狭く高回転寄りになり、大排気量ほど広く低回転寄りになる傾向があります。

パワーバンドでシフトアップ

図はどのタイミングでシフトアップすべきかを表したもの。たとえば、コーナーを1速で立ち上がって、長い直線をフル加速しながら5速までシフトアップしていく場合です。シフトポイントは各ギアともエンジンが最大効率を発揮する回転数が基本となります。つまりパワーバンドです。パワーバンドとは概ね、最大トルク発生回転数から最高出力発生回転数までの間ぐらいです。パワーバンドは小排気量ほど狭く高回転寄りになり、大排気量ほど広く低回転寄りになる傾向があります。

 

シフトダウンの場合は、シフトアップほどシビアに回転数を管理する必要はありません。パワーバンドをキープすることよりも、ギクシャクせずにスムーズにギアを下げていくことが重要です。基本的にはブリッピングシフトダウンで下のギアに回転数をシンクロさせながら、コーナーに合った適切なギアまで落としてアプローチ。旋回中に再びスロットルを開け始めるとき、パワーバンドよりやや低めの回転数になっているほうがスムーズ。そしてコーナーの出口でピークに達するのが理想と言えます。

シフトダウンはより柔軟に

シフトダウンの場合は、シフトアップほどシビアに回転数を管理する必要はありません。パワーバンドをキープすることよりも、ギクシャクせずにスムーズにギアを下げていくことが重要です。基本的にはブリッピングシフトダウンで下のギアに回転数をシンクロさせながら、コーナーに合った適切なギアまで落としてアプローチ。旋回中に再びスロットルを開け始めるとき、パワーバンドよりやや低めの回転数になっているほうがスムーズ。そしてコーナーの出口でピークに達するのが理想と言えます。

ホッピング防止策

半クラでバックトルクを逃がす

いきなりブリッピングシフトダウンにトライするのが難しいときは、半クラでエンジンブレーキ(バックトルク)を緩和させる方法もあります。シフトダウンして急激にクラッチをつなぐと後輪がホッピングしまい、それ以上ブレーキをかけられなくなってしまいますが、これを防止するにも効果的。シフトミスして何速に入っているか分からなくなってしまったときや、コーナーを立ち上がってすぐにシフトダウン、次のコーナーに入っていきたいときなど、ブリッピングしている時間的な余裕が無いときに有効です。

 

手応えが出たらじんわりリリース

最近ではバックトルクリミッターやスリッパークラッチといった、エンジンブレーキを緩和させる機構が装備されたモデルも増えてきましたが、これをライダー自身で行う方法です。クラッチレバーの緩め加減がキモで、エンブレが効き始める部分までは素早く緩めて、手応えが伝わってきたらじんわりとリリースしていきます。スポーツライディングではクラッチ操作は2本指が基本ですが、この場合は微妙な加減が必要とされるため4本指がおすすめです。

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スマテク講座 講師
佐川 健太郎(Kentaro SAGAWA)
「ライディングアカデミー東京」校長。1963年東京生まれ。モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践的な低速系ライディングから、モータースポーツとしてのサーキットライディングまで、テクニックやノウハウに造詣が深く、メーカー系イベントや各種スクール、走行会などでも講師を務める。米国ケビン・シュワンツ・スクール修了。MFJ公認インストラクター。
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